その顔が見たかった(光忠♀ワンドロ・アイドル長谷部×アイドル光忠♀

『みんなー、ありがとーー!』
わあ!と盛り上がる会場に向かって手を振る。
『今日は最高のライブになったよ!』
ふわふわと笑う光忠に「みっちゃーん!」と黄色い声が上がった。
ウェディングドレス・・・今回の新曲衣装だ・・・の裾が揺れる。
衣装は可愛いがまさかウェディングドレスを仕事で着るなんて思わなかった。
『えーっと、ここでゲストさんからコメントPVきてまーす』
『・・・え?』
その隣で手を振っていた清光が唐突にそう言う。
驚いたのは光忠だけで、他のメンバーはにやにやとこちらを見ていた。
なるほど、教えられていないのは自分だけらしい。
今日は光忠のバースデーライブだった。
だからこそのサプライズだろう。
『はいはーい!モニターにごちゅーもく!』
はしゃぐ彼女らにつられて光忠は後ろを向いた。
大きなモニターに映ったのは長谷部だ。
『・・・長谷部、くん?』
『光忠、バースデーライブおめでとう。お前が俺のバースデーライブを祝ってくれてからもう1カ月経つんだな』
映ったのは公私ともに公認である恋人の長谷部からで。
いつも通りの彼の言葉にくすりと笑う。
画面の中では今回の彼女たちの新曲について意見していた。
・・・と。
『今から花嫁様を・・・頂きに参る』
『うわ、うわぁっ?!!』
下からせり上がって来た長谷部に横抱きにされる。
フレアスカートがふわりと揺れた。
『え、ちょ、ええ?!!!』
『誕生日おめでとう、光忠』
ふわりと笑う顔が近い。
わああ!!と会場の声が光忠を揺らした。
なんで、なんで。
疑問だけがグルグルと回り、端正な顔を見上げるしかできない。
『悪いが貴様らの嫁は俺が貰う。・・・恨むなら俺たちの新曲内容を恨むんだな』
意地悪く笑う長谷部がたん、と床を蹴る。
『えぇえええ?!!』
驚愕する光忠の声ときゃー!ともぎゃー!ともつかない悲鳴が会場を包んだ。
「暴れるな、落ちるぞ」
囁かれた声はマイクには乗っていない。
どうやら下で切ったらしかった。
・・・そう、長谷部は『空を飛んだ』のだ。
そういえば向こうの新曲のテーマは『怪盗』で、今回はワイヤーアクションを使ったPVだったっけ、と思い出したのはライブが終わった後で。
「やだ、ちょっと、下して、長谷部く・・・!ひぃいいやああ!!!!」
その時はただただ悲鳴を上げるしかなかった。
命綱は長谷部の腕だけだ。
意地悪、馬鹿となじり機嫌のいい長谷部を睨む。
「なんで、なんで・・・?!」
「その顔が見たかった」
珍しく無邪気に笑う長谷部。
まんまと騙されたのが悔しくてたまらない。
下では他のメンバーが長谷部のグループの他のメンバーと歌って踊っていた。
「もう少しこの空中デートを楽しまないか?」
「ぅううう!!!」

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