あまい/にがい(ねんへし燭SSS・ワンドロお題)

みつはあまい
そう、ねんが言い出すから何かと思った。
「・・・蜂蜜は、甘いものだろう」
「はちみつじゃない、みつだ」
「はぁ?」
噛み合わない会話に俺は首をかしげる。
何を言っているのやら。
時々こいつがよく分からなくなる。
「〜!」
「!みつ!」
何処へ行っていたのか、ねん光が駆けてきてねんに抱きついた。
ねんも嬉しそうに抱き締めている。
微笑ましい光景・・・そう思った矢先。
「?!」
やおら手を取り、手袋を外したかと思えば、ぱくり、とねんがねん光の手を食べた。
「お前、何して・・・?!」
「・・・にがい」
焦る俺とは裏腹にねんが顔をしかめる。
いやいや、顔をしかめたいのはこちらの方だ。
頭が痛い。
そんな俺をよそにねんは手を口から出し、ねん光に不満そうな顔を向けた。
「みつ、おまえ、なにかかくしてるな?」
「??」
「とぼけてもむだだ。おまえはいつもあまい。にがいときはなにかをかくしてる」
「!・・・〜!」
ねんの追及にねん光はぱたぱたと手を振る。
それから慌てたように外へ飛び出した。
「まて!」
「・・・え?何?ねんへしくんがどうしたんだい?」
それを追いかけようとするねんが聞こえた光忠の声にぴたりと止まる。
「あ、長谷部くんいたの。お帰り」
「ああ。・・・それで?ねん光は何と?」
「それなんだけど」
くすりと笑った光忠が俺のとなりに腰を下ろした。
「料理のね、下準備をしてたんだよ」
「ほう」
「ねんへしくんが遠征でいなくて寂しいからって。帰ってきたねんへしくんに食べてほしかったんだって」
「・・・みつ」
光忠の言葉にねんはまたねん光の手を取る。
「ただいま。みつ。もうさみしくないだろう?」
「!」
「やはりおまえはあまいほうがいい」
笑って、ねんがねん光の指に己のそれを絡めた。
ふわり、漂うそれは甘い甘い空気。
見ているこちらが恥ずかしくなる。

「なんだい、長谷部くん?」
「いや、何も?」
きょと、とする彼の全身が甘いのは俺だけが知っていれば良い話。

(彼が甘いのなぞ、百も承知)

「舐めるのは手だけにしておけよ、ねん」
「・・・長谷部くん、ほっんと最低!」

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