こっちを向いて(ねんへし燭SSS・ワンドロお題)

「みつ!」
ぱたぱたと俺の前をねんが走る。
ふと前を見ればねん光が焦った様子で走っていくのが見えた。
…何をやっているのだろう。
初めてねんがねん光に出会ってから数日。
こうして良くねんはねん光追いかけている。
追いかけられれば逃げたくなるのは心情だろうに。
可哀想に思い、おれはひょいとねんをつまみ上げた。
「なにをする、でかいの!」
「追いかけるのはやめてやれ。可哀想だろう」
「なぜだ!おれはみつにふりむいてほしいだけで…!」
じたじたと暴れるねんにあのな、と俺はため息を吐き出す。
そうしてある話をしてやった。



ひょいとねん光が俺の部屋を覗きこむ。
きょろきょろと辺りを見回し…俺の側にやって来た。
「…」
「どうした?ねん光」
俺の袖を引っ張るねん光の側に屈み込む。
不思議そうに首を傾げて腕を振り回すそれは可愛らしいものだ。
「ん?ねんか?知らんが」
俺の言葉にねん光がしゅんとした。
寂しいのかと聞けばぶんぶんと首を振る。
それでも少し寂しそうで思わず笑った。
光忠にもあれくらい可愛らしいところがあるといいのだが。
「みつ」
「?!!」
後ろから抱き締められてねん光が驚いたように振り向いた。
「やっとこちらをむいてくれた」
ねんが満足そうに笑う。

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