おやすみ/夜

からりと襖を開けた。
すやすやと眠る光忠の足はいつもと同じで綺麗だ。
ゆらりと笑みを浮かべて長谷部は襖を閉める。
「・・・ん」
「光忠?」
軽い声に振り向くとぼんやりと目を開けた光忠がそこにいた。
「・・・長谷部、くん」
ふわりと彼が笑う。
生きる事を諦めた目で。
闘う事を望まなくなった眼で。
光忠は笑う。
降り込んだ雪は黒く汚れていた。
待雪草の花が風に揺れる。
すっかり刀としての生き方を忘れ長谷部のものになった、光忠に「おやすみ」を。

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