ほしいもの(ねんへし燭SSS・ワンドロお題)

「何か欲しいものはあるか?」
「?」
ちてちてと走り回っていたねん光が俺のもとに菓子を持ってきたから礼を言うついでに聞いてみた。
案の定小さく首を傾げる。
「いつも誰かのために頑張っているだろう。お前も何か欲しいものややりたいことがあるのではないか?」
俺の問いにねん光はもう一度首を傾けた。
よくよく聞けば料理も好き、掃除も手伝いも好き、とのことらしい。
やはりこいつは光忠によく似ている。
「?」
「ほう、俺のことも好きか」
指先にぎゅっと抱きついてきたねん光の頭を撫でた。
可愛いやつ。
「でかいの!!」
「五月蝿いぞ、ねん」
「おれのみつになにしてる!」
仏頂面を晒しながらねんが近付いてくる。
こいつの独占欲の強さには困ったものだ。
「!」
「ん?」
ふと、引っ張られたのに下を見ればねん光が手を動かしていた。
さながら、きらきらと星を意味させるように。
「好きだな、お前も」
苦笑しながら引き出しからそれを出してやる。
瓶から転がり落ちるは色とりどりの金平糖。
その中の一つを手に取り、ねん光はねんの元に駆けた。
「おれに、か?」
ずい、と渡すそれにねんは目をぱちくりとさせ、それから顔を綻ばせた。
…ああ、なるほどこれは。


好きなあなたに贈るための、甘いものが欲しい。

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