和服・和装/へし燭ワンドロSSS

主が「暑いだろうから」と甚平を本丸全員に作ってくださった。
本当に主の趣味は…と思ったが口には出さない。
今までの「作品」に比べればましだ…そう思っていたのに。
「…あ、長谷部君」
「…は?」
ふわりと笑った光忠に、俺は瞠目する。
…やはり主は主だったか…!
「…?何?長谷部く…うわっ?!」
不思議そうな光忠の肩を掴んだ。
「お前、なんで浴衣なんだ!?」
「え?」
光忠が首を傾げる。
彼の身を包んでいるのは黒い浴衣だった。
それだけならまだ良い。
普段洋装の光忠が和装も似合うのはしっている。
黒い浴衣には藤の模様が入り、ふわりとした帯は黄色に近い金を帯びて、烏羽色の髪には金と榛色の簪が…。
…何が言いたいか。
「お前のそれ、女性用じゃないのか?」
そう、細いとはいえ男性のそれを包んでいるのは女性が着る浴衣だ。
こいつ、見た目を気にするんじゃなかったのか?
「ああ、僕も最初は断ったんだけどね、主が長谷部くんが喜ぶっていうから」
「…はぁ?」
光忠が思いもよらないことを言うから思わず聞き返してしまった。
いや、喜ぶって、お前な…。
「やっぱり変かな…?」
ふわりと、光忠が浴衣の裾を持ち上げる。
「…変じゃない。だから着替えてこい」
「え?」
矛盾したことを言ったのは分かっていた。
だが。
「可愛い格好を見せるのは俺だけにしておけと言っている!」
「…長谷部、くん」
光忠がふにゃりと笑いながら、格好良いの方が嬉しいなぁと言った。
…やはり、光忠は可愛らしいな。


たまには主の趣味が全開の和装も…ありだと思った。




「女性の浴衣ってすーすーするよね。下着穿けないし」
「…は…?」

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