水遊び(ねんへし燭ワンドロSSS

その日、本丸では雨が降った。
随分と降り続いたそれは少し古くなっていた瓦を破損してしまったようで。
「うわぁ?!」
「光忠?!」
何やら驚いた声が聞こえたから慌てて行ってみたら…これだ。
「何をやっとるんだ、貴様らは!」
思わず怒鳴る。
ぴゃ、とねんどろいどの光忠…ねん光がねんどろいどの長谷部…ねんの後ろに隠れた。
膝丈まで履き物をたくしあげ、上着も肘まで捲りあげている。
如何にも水遊びをしていました、という感じだ。
…そう、水遊び。
「へやにみずたまりがあったからな」
「あったから、という理由で遊ぶやつがあるか!」
どや顔をするねんに俺は怒鳴る。
光忠はねん光を庇いながら、まあまあ、なんて宥めてきた。
…まったく。
「雨漏りを放置していた方にも責任はあるし…ね?」
「ぐ…」
光忠のそれはもっともだ。
水溜まりを作っていたのは先日の雨によって出来た雨漏りである。
しなければ、と思っていたがここまで酷いとは…。「みつ」
「…?…!!」
ねんの声にねん光が振り返る。
途端、ぐん、と燕尾を引っ張られ、ねん光は尻餅をついた。
ぽたぽた、黒い髪から滴り落ちる滴が服を濡らし、肌を透けさせる。
「…長谷部くん」
「…光忠?」
静かな光忠の声に俺はひくりと口元を歪ませる。
これは、まさか。
「ねんへしくん、借りるね」
「…あ、ああ」
「なんだ、みつただ。おれはものじゃな…おい、まて、わるかった、わるかったと…!」
哀れ、ねんの声が遠ざかる。
怒らせた光忠ほど怖いものは…ない。
不安そうに見上げるねん光に俺は大丈夫だと告げてから抱き上げ、風呂場に向かう。



水遊びが悪いとはいっていない。

だが。
(何事もほどほどに)

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