意外な一面(へし燭ワンドロSSS

「はあ?燭台切の意外な一面だぁ?」
「そう!へし切って燭台切さんと長いでしょ?」
「僕らが知らない光忠さんの意外な一面知ってると思って」
わくわくした表情で言うのは加州と大和守だ。
なんでまた、と問い直せば「いつも完璧で格好良い燭台切光忠も弱点があるのかと思って」らしい。
「お前らも長いだろうが」
「長谷部さんには敵いませんよ」
「産まれた時期が違うもんな」
顔を見合せ、なー?と声を揃える。
ったく。
と、いうことは本丸のことではなくもっと前の事を言っているのだろう。
「…そうだな、当時の燭台切はまだ号がなかったから、光忠、とだけ呼んでいた。背丈は俺の腰ほどまでしかなく、国重さまと呼んで俺を慕っていたな」
当時を思い返しながら言えば二人が驚いたような顔をする。
「燭台切さんがへし切を『国重さま』?」
「なんか、危ない感じ…」
「おい。…まあ、なんだ、その時の光忠は大層愛らしく…まあ今が可愛くない、などということはないんだが…それどころか今は今でまた別の可愛らしさが…。…まあその話はいい。意外な一面だったか?」
「あ、はい」
「ちょっと、安定…」
聞けば、にこりと笑う大和守とは対照的に加州が引きつった表情をしていたが…聞いといて失礼なやつだ。
「ふむ。当時の光忠は俺の後ろを常に付いて回っていたな。普段は俺の膝の上だったし、寝るときは俺の腕の中だった。ああ、金平糖が好きだったから良く懐に忍ばしていたぞ。『国重さま、こんぺとーはございますか?』と聞く光忠は可愛らしかったな。書物を読むのが好きで、新しい知識は俺に報告しにきていたぞ。それから…」
話していたら色々と思い出してきた。
ふわふわ笑う光忠は本当に愛らしかったし『光忠めは国重さまのお嫁さまになりとうございます!』と言った時はこのまま神隠しにでもあってしまえば良いと…。
「…長谷部、くん…?!!」
「げっ、光忠?!」
怒りの声に振り向けば、ふるふると震えた光忠が赤い顔で立っていた。
「清光くんと安定くんに何言ってるんだい、君は?!」
「待て、落ち着け、これはあいつらが…!」
「はぁ?!言い訳する気なのかな?!」
怒りに打ち震える光忠が問答無用、と傍にあった石…いや、あれは岩か…を持ち上げ…ちょっと待て、俺を殺す気か、あいつは!
「おい、光忠、落ち着け、話を…!」
「長谷部くんの、ばかぁ!」




「知ってたけどさぁ、へし切って…」
「うん。光忠さんのこと…」
(意外なほど盲目に愛してる)

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