ひまわり(ねんへし燭ワンドロSSS)

「おい、でかいの。ひまわりばたけとやらはどこにある」
「…はぁ?向日葵畑?」
ねんの唐突なそれに俺はすっとんきょうな声を上げた。
またこいつはなんだってそんな。
「…みつに」
「あ?」
「みつにひまわりをやりたい」
俺の疑問を感じたのかねんがそう言った。
ああ、と思う。
そういえば、光忠とねん光が向日葵の話をしていたか。
太陽の花とも呼ばれてるんだよ、などと光忠が言っていたから気になったのだろう。
見てみたいなら言えば良いものを無駄に遠慮しているからこいつがいらん気をまわすんだ。
…まったく。
はあ、とため息を吐き出して俺は立ち上がる。
「おい!」
「…行くぞ」
怒鳴るねんにそれだけを言った。
目指すは向日葵畑。




「…みつ!!!」
「?…!!」
ねんの呼び掛けに不思議そうに首をかしげたねん光の目が大仰に見開かれる。
それはそうだ。
ねんは戦闘にも行っていないのに中傷を負っているのだから。
ちなみにそれは向日葵を切ったあとに倒れてきた向日葵に押し潰されたから、というのはこいつの名誉のために秘密にしといてやろう。
「…??;;;」
「だいじょうぶだ。…それより」
ほら、とねんが向日葵を差し出す。
蜂蜜色の目を丸くさせ、ねんと向日葵を交互に見比べたねん光がねんに抱き着いた。
「うわ、みつ?!」
驚いた声を上げるねん、嬉しそうに抱き付くねん光。
なんだ?と見上げ、その様子をくすくす笑って見ていた光忠に目だけで聞く。
「長谷部くん、知らないかい?向日葵の花言葉」
「花言葉?」
うん、と嬉しそうに笑う光忠がそっと囁いてきて、俺は目を見開いた。
…嗚呼、こいつは。





「向日葵の花言葉はね、私はあなただけを見つめる…だよ」

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