二人の約束(へし燭ワンドロSSS)

いつか契った約束。
俺は光忠と。

「国重さま!」
黒い着流しを引き摺った少年、長船の一振り、末の光忠が嬉しそうにやってくる。
「どうした?長船の子よ」
「今日はこれを受け取って頂きたいのです!」
定位置である膝の上にちょこんと乗り、にこにこと差し出してくるそれ。
「これか?」
「はい!」
機嫌の良い光忠が差し出してくる小さな箱を受け取り開いてみる。
…ほう。
「指輪、というやつか?」
「はい!海の向こうでは好いている者にこうやってゆびわ?を贈るそうなのです!」
書物にありました!と笑う光忠。
ああ、この子どもは分かっていないのだろう。
これがどれだけの効力をもつか!
「指輪はお前と俺の霊を結ぶと聞く」
「霊…ですか」
驚いたように光忠が言う。
しかし、すぐにそれをふわりと崩し。
「国重さまとであれば喜んで結ばれましょう。…国重さまは、この光忠めと霊を結ぶと…契ってくださいますか?」
美しいそれで笑う、子どもは。
嗚呼、なんと美しいことかと俺もまた笑った。
「ああ、契ろう。二人だけの…約束だ」
黒い髪に口付けを落とす。
くすぐったそうにくすくすと光忠は笑った。




契りましょう。
二人だけの約束を。
永久に続く、霊の契りを。

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