華燭(へし燭SSS・ワンドロお題)*大太刀長谷部×織田時代光忠

人というのは婚姻をし、籍を入れ、子を成すのだと云う。
「おかしなものだな、人間と言うものは」
長谷部の長い榛色をした髪が揺れる。
その膝の上、ちょこんと首を傾げたのは長船の一振り、光忠だ。
「何故おかしいと思うのです?国重様」
紫の目が長谷部を映した。
「人間は儀式が多い。それが不可思議にも思うしおかしなことだ」
「儀式…ですか」
こてりと光忠が首を傾げる。
ふわふわと足を揺らし不思議そうな少年に長谷部は笑いかけた。
「結納や婚儀、それに何の意味があるのだろうな?」
「?と、いいますと?」
呟くと振り仰ぎそう尋ねてくる。
「共にいることに儀式を行うその意味が理解できん」
「そうでしょうか」
光忠が笑う。
ふわりと、ただ可愛らしく。
「光忠めはその儀式を行うことで関係が強固になるならば、幸せなことと思います」
そんな光忠の頬に触れて長谷部は笑った。
こそりと光忠の耳に己の口を近づける。
紫の目が大きく見開かれた。
「…国重様」
光忠がふにゃりと笑う。
この笑みを見ることが出来るのならば、この世界を壊してしまっても良いとさえ…思った。


二人だけの世界。


それは、開かれた終結。

誰も物語の終幕はわからないし、それは二人だけが知っていれば良いと思う。



さあ華燭を灯しましょう。


少年の瞳に似た、藤色の焔を。

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