新年(へし燭SSS・ワンドロお題)

「新年だな」
「…え?」
共に縁側で酒を酌み交わしていた彼が俺の言葉にきょとんとする。
それから、ああ、と笑った。
「そっか、うん、新年明けましておめでとう…長谷部くん」
「ああ。…今年もよろしく頼む」
「こちらこそ」
隣に座った彼がふわりと笑む。
「こういう年越しも、いいよね」
「ああ、そうだな」
「…ふふ」
黒い着流しを揺らして微笑む光忠の頬をそっと撫でる。
くすぐったいよ、と彼がまた笑った。
溶ける金の目が可愛らしく、構わず手を伸ばす。
触れた頬は普段の彼から比べても驚くほどに熱かった。
「熱いな」
「お酒の所為じゃないかな」
すり、と頬を寄せてくる光忠が愛おしくてたまらない。
素直に甘えてくるのは酔いが回っているのか…新年と言う特別な日だからこそ、か。
互いに笑みを溢し合い、どちらともなく口を寄せた。
光忠と共に新年を迎えるようになって早2年。
月日がたつのは…早い。



この本丸で出会ってから2年、1ヶ月で告白し付き合うようになって約1年。

…彼を壊して、また1年。



美しい彼が壊れるまでの日数など、覚えてはいなかった。
過程など、関係ない。
今彼がいてくれれば…それで。



夜の冷たい風が吹きすさぶ。
彼の前髪をゆわりと揺らした。
夜風に晒される髪の下の紫の目。
「っ」
一瞬びくりと肩を揺らす光忠の腰を掴まえ、口内を犯す。
瞬く間に金の目が快楽に溶けていった。
それを感じ、思わず口角を上げる。



愛しい彼と、新年を迎える…その喜びを。



(数百年待ったのだ。彼が自分のものになるまで)





(誰に渡してなるものか、と強く強く抱きしめた)

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