海へ行きたい光忠ちゃんの話(へし燭♀)*R15

 海に行ってみたい、と光忠が軽やかな声でそう言う。
 それに思わず呆けた顔になってしまった。
「…海、だと?」
「うん。海!僕、行ったことないんだよね」
 彼女の笑顔から、純粋なそれなんだろうな、と思う。
 思う、が。
「海なぁ…」
「ダメ?」
 渋る長谷部に、光忠がこてりと首を傾げた。
 上目遣いのそれに思わず詰まる。
 …この可愛い顔には弱いのだ。
「…プライベートビーチに連れて行ってやる」
 それじゃ駄目かと聞けば、ぱぁ、と顔を輝かせて、ううん!と首を振った。
「プライベートビーチ!良いの?!」
「ああ。行ってみたいんだろう?」
 そう、優しく聞く長谷部に光忠は、ありがとう!と抱きつく。
 それを抱き留め…長谷部はにやりと笑った。

「…」
「…いつまで拗ねてるんだ」
 頬を膨らせて座り込む光忠に、長谷部は呆れた声を出す。
「だって、プライベートビーチって言ったのに……」
「プライベートビーチだろう?」
 首を傾げれば光忠は、「これはプライベートビーチって言わないの!」と語気を荒くした。
「ここ、撮影場所でしょう?!!しかも屋内!」
「誰も来ない、という意味ではプライベートビーチだろうに」
「…そりゃあ…そうかもしれないけど」
 怒れる光忠は、やがて諦めたのか、小さく溜め息を吐き出して立ち上がる。
 ひらりと紫のパレオが揺れた。
 ホルダーネックタイプのビキニトップスとレースタイプのパレオは菫色とバイオレットという二色使いだ。
 光忠は「派手じゃないかな?!」と恥ずかしがっていたが…よく似合っていると思う。
 まあ本物のビーチには連れて行けないとは思うけれど。
「おいで、光忠」
 ぽんぽん、とリクライニングチェアを叩く。
「サンオイルを塗ってやるから」
「…屋内なのに…?」
 長谷部のそれに、光忠はきょとんとしてみせた。
「俺の会社だぞ?…本物と大差ないように作ってある」
「…凄いんだね…??」
 よく分かっていないのか、クエスチョンマークを頭に引っ付けたまま、光忠は横になる。
 とぷりとサンオイルを手に出し…それを彼女の背に塗りつけた。
「んひゃ?!」
「我慢しろ。焼けて痛がるのはお前だぞ?」
「そ、う…だけどぉ…んんぅ!」
 ぴくんっと光忠の背中が跳ねる。
 長谷部の調教の所為でどこもかしこも性感帯みたいな体だ、じわじわ嬲られていく刺激は辛いのだろう。
 首筋から足の先までじっくり塗りたくっていく頃にはもう息も絶え絶えだった。
「ほら、次は反対向きだ」
「んぅ…ふぁぃ…」
 とろん、とした声で光忠はのろのろと上を向く。
「おっと」
「ひゃぅ?!!」
 むにゅりと大きな胸を揉みしだけば光忠は甲高い声を上げた。
 よく見ればビキニの中で乳首がつんと立っているし下半身はしとどに濡れている。
 長谷部は知っていてわざとその体を火照らせていった。
「ほら、出来た」
 にこりと笑って立ち上がらせる。
 ふらふらで海どころではないだろう。
「…国重さんの、ばかぁ…」
 涙目の彼女にしれっとした顔をよこした。
「俺はオイルを塗ってやっていただけだが?」
「うぅ、う〜〜!!!」
 悔しそうな彼女に浮き輪を投げてやる。
「ほら、行くぞ」
「…ぁ…」
 よたよたと光忠は長谷部に手を引かれてついてきた。
 嫌ならば振りほどけばいいのにそれはしない。
 してはいけないと分かっているのだ。
 そうしたのは…他でもない、長谷部なのだけれど。
 浮き輪をつけ、水に入り…光忠はようやっとほっとした表情になった。
 水をかけたり泳いだりとそれなりに楽しそうにしていたが、ふと「もう出る」と陸に向かって歩き出す。
「…あ、あれ??」
「どうした?」
 焦った表情の光忠に笑いをこらえながら聞けば、彼女は「浮き輪、抜けなくなっちゃった…」と言った。
「そうか」
「どうしよう、トイレ行きたいのに…」
「…手伝ってやろうか」
「え…んひゃぅ?!!!!」
 困った表情の彼女を抱え上げ、再び海に戻す。
「や、やだっ、なんで、ねぇ、国重さん?!」
「水力の中でなら脱げるかもしれないだろう?」
 暴れる彼女を押さえつけ、しゅるりとビキニの紐を解いた。
 遠くにそれを投げ、揉みしだきながら下半身を持ち上げる。
 浮力のお陰か、ぷかりと簡単に持ち上がった。
「え、まって…んぁあああ!!」
 ちう、とまろみを帯びた双丘にキスを落とせば光忠は可愛らしい声で啼く。
 ビキニをずらして指で撫で、つぷりと菊門に挿せば光忠は怯えた表情で被りを振った。
「やだ、やだぁああ!がぼっ、ぅえっ、ごほごほっ…おしり、こわいって…いってる…!」
 ぽろぽろと涙を零し、時折溺れかけながら光忠が訴えてくる。
「本物の海に行っていたら見ず知らずのやつに同じことをされていたかもしれないぞ?これに懲りたら海に行きたいなぞ言わんことだ」
「言わない、言わないからぁああ!!!」
 ぱしゃぱしゃと水が跳ねた。
 ひっくり返し、上向けにしてからキスを落とす。
「いい子だ」
 くすりと笑い、長谷部は深く口付けた。
 少し塩辛い味がするのは…気のせいだったろうか。
 その後、全身がふやけるまで水につかることになろうとは…光忠は知る由もない。
(これは、悪い男に溺れた、可哀想な少女の物語)

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