プレゼントは俺とかいう典型的なあれそれ(レンカイ)

「兄さん、おれ今日誕生日なんだけど」
台所で洗い物をする兄さんにそう言えば、振り返ってきょとんとした。
「?さっき皆でお祝いしたよね?」
「うん、してもらった。ケーキ美味かったよ、今年も」
「ふふ、それは良かった」
おれのそれにニコニコと笑う兄さん。
あー、兄さんの笑顔は世界一可愛いよなぁ…ってそうじゃなくて。
「おれ、そろそろ設定年齢を稼働年が追い抜きそうなんだよ?家族みんなで誕生日も悪くないけどさぁ」
「そんなメタい話しなくても…。そんなこと言ったら俺なんかアラフォーだよ?」
「アラフォーの兄さんもおれは有りだけど」
「レンったら……」
ぐっと力強く言うおれに兄さんがくすくす笑う。
いやでもアラフォーの兄さんとか絶対に格好良いし可愛いじゃん!
「あんまり歳の話するとめーちゃんに怒られちゃう」
「げっ、それは勘弁」
可愛く笑う兄さんに思わず嫌な顔をしてしまった。
メイ姉ぇにうっかり年齢の話をしてしまったマスターが3日間食事抜きだったのは記憶に新しい…藪蛇は無理に出す必要ねぇもんな。
「ってか歳の話は良いんだよ。おれの誕生日!!プレゼント下さい!」
「もー、ちゃんと上げたでしょ?レンもリンみたいにシャンメリーで酔っちゃった?」
おれの渾身のお願いにあっさり言う兄さん。
いたずらっぽく笑う兄さんはめちゃくちゃ可愛いけど、可愛いけど!
「酔うわけないじゃん。つかリンのあれも素だよ。ルカ姉ぇじゃあるまいし」
リンとルカ姉ぇの「ルカたぁあんあたしにルカたんちょうだい!」「私はあげられませんけれど…後で返してくださるなら?」というやり取りを思い出しながら言う。
珍しくも明らかに酔っ払ったルカ姉ぇが黄色いリボンを髪につけて「私、プレゼントみたいですわね」なんてホント狼ホイホイだと思うんだよな。
ミク姉ぇとメイ姉ぇのその手があったか、って顔が忘れられない。
来年のルカ姉ぇの誕生日は凄い事になりそう…ってルカ姉ぇの話は置いといて。
「ルカも酔ってなかったと思うけどなぁ?」
「いやぁ、あれは明らかに酔ってたじゃん。酔ってもないのにあんな話したリンと二人で風呂には行かないでしょ」
くすくす笑う兄さんにおれは言う。
ルカ姉ぇから貰ったばかりのバラのバスボムを持って嬉々としながら風呂に向かったリンとルカ姉ぇを思い返しながら、そういえば今年俺が兄さんから貰ったのもバスボムだったな、と思い出した。
いつもはヘッドフォンとか、日常で使えるやつだから珍しいな、とは思ったんだよな。
「…鈍いよね、レンは」
「…ん?」
小さな声で呟かれるそれを聞きのがすおれじゃない。
待って今なんて?
慌てて貰ったプレゼントをひっくり返す。
黄色と青のバスボムに混じってでてきたのは小さな紙切れ。
中身は……。
「わっ。…やっと気付いた?」
無言で抱きついたおれに兄さんが楽しそうに言った。 
マスターはミクと新曲レコーディング、めーちゃんは優亜さん(マスターのお姉さんだ)とPV衣装を作る工房に籠もるんだって、と教えてくれた兄さんがふわりと笑う。
「誕生日おめでとう、レン」
綺麗に微笑む兄さんがくれた、それは。
『俺、KAITOを一日好きにして良い券』
「兄さん、大好きぃい……」
「知ってるよ?」
絞り出すように言うおれに、ちゅ、と触れるだけのキスをしてくれる兄さんは…何より嬉しい、プレゼント、だ。

「…ねぇ、レン。何か当たってるんだけど…」
「当ててんのよぅ…!」
(まだまだプログラム上は思春期な青少年を煽るほうが悪い!)

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