プレゼントは俺とかいう典型的なあれそれ(ザクカイ)

「そいやァ今日はクリスマスらしいな」
「…クリスマス?」
カイコクのそれにザクロは首を傾げる。
まさか彼の口からそんな話題が出てこようとは思わなかったから驚いたのが半分、この実況に参加させられてからもうそんなに経ったのか、という思いがもう半分だ。
「…忍霧、お前さんクリスマスを知らないなんてこたぁ…」
「そんな訳があるか。…時間が経つのは随分速いものだな、と思っただけだ」
だが、カイコクはそうは思わなかったらしく若干引いた顔をするから呆れた表情でそう一蹴する。
途端にカイコクが、あぁ、と笑った。
今度こそ理解したらしい。
「何故今日がクリスマスだと?」
ザクロが問い掛ければカイコクは嫌そうな顔をして「パカのやつが浮かれてたんでェ」と言う。
カレンダーも季節の移り変わりもないこの島では、うっかりすれば日付感覚を失いそうになるのだが、たまにこうやって自分たちの監視役であるパカが行事を祝うから思い出しもするのだ。
しかしカイコクがこんなに嫌がるのもまた珍しい。
余程鬱陶しかったのだろうか。
だがあまり詳しく聞きたくもなかったから「そうか」というだけに留めた。
藪は無理に突くものではない。
代わりに、「そういえば今日誕生日だった」と告げた。
「誕生日?…誰の」
「俺と…サクラのだが」
きょとんとするカイコクにそう言えばきれいな目を丸くさせる。
己の誕生日などあまり重要視もしていなかったが、カイコクはそうでもなかったようで、ほんの少し困ったような顔をして笑う。
「言ってくれりゃあ…まあどっちみちプレゼントなんて用意は出来ねェが……おめっとさん、忍霧」
柔らかく笑む彼に、ザクロも顔を染めながら「ありがとう」と返した。
普段天邪鬼な彼が素直なのもまた珍しいからだ。
カイコクなりに、恋人は祝ってやろうと言う心遣いなのかもしれない。
「で?何が欲しい?…まさか、プレゼントは貴様、なんて言わねぇだろ??忍霧」
にこっとカイコクが笑った。
誰がそんなセクハラ親父みたいなことを言うのか、と思ったが煽られっぱなしなのも癪である。
「…。…くれないなら自分で用意しても良いよな」
「はぁ??…っ、と…」
小さく呟き、眉を寄せるカイコクを引っ張った。
とす、と己の腕の中に飛び込んできた彼を抱きしめ、ザクロはそっと囁く。
「…愛している、鬼ヶ崎」
「?!!…な、ぁ…?!」
パクパクとカイコクが言葉を失って見上げてきた。
顔を真っ赤に染める年上の恋人が堪らない。
「意外と初な所が可愛らしいな、お前は」
「おし、ぎり」
「ほら、俺に褒められてすぐ顔を真っ赤にさせる。そういうところが俺は好きだ」
するりと頬を撫であげビクついたカイコクの耳元で愛の言葉を囁いた。
「可愛い。好きだ鬼ヶ崎」
「…も、もう勘弁してくんなぁ…」
「そうやって余裕がないところも愛おしいな」
体に触ってお面を取って愛の言葉を囁いて。
そっとキスをしてやれば年相応の素直で蕩け切った可愛い恋人の完成だ。
「忍、霧?」
ぽやりと見上げる彼は何を言われるか無意識に期待しているのだろう。
可愛い、と囁き、ザクロはマスクを外す。
この可愛らしい年上の恋人から貰ったプレゼントは…今まで貰った何よりも一番だと、思った。
(いつも大人だけど素直でも可愛くもない彼の、年相応で素直で可愛らしい姿が見たい)

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