生クリームプレイはご存知ですか出来たらやってみませんか(ザクカイ)

「ユズ先輩、ほっぺたにクリーム付いてますけど」
「んえ、何処にだい?カリリン」
夕食後、ふとそんな会話が聞こえてきてザクロは顔をあげた。
見れば少し向こうでカリンとユズが話している。
「違う、反対…そこじゃなくて…ああ、もう、私がやりますからじっとして」
最初は指示を出そうとしてたようだがじれったくなったのだろう、ハンカチを取り出してふき取っていた。
「んふふー、舐め取ってくれても構わないんだぜ?」
「右ストレートお見舞しても構わないなら」
「怖いにゃー、カリリンはー!」
けらけらと笑うユズに早く片付けてくださいね、とカリンが去る。
「…生クリームプレイ……」
ぼそりとそう言ったのは珍しく隣にいたアカツキであった。
「…なんだ、それは」
「あれ、知らないんですか、忍霧さん」
眉を寄せるザクロにアカツキがきょとんとする。
「何の話だい?」
「ユズ先輩。…忍霧さんが生クリームプレイを知らない、と言うので」
「…楽しそうな話だな」
食器を手に持ちながらこちらに来たユズがにやりと笑った。
「…で、なんだその生クリームプレイとやらは」
「うん、ザッくんは女体盛りを知っているかな。裸の女性の上に刺し身を盛り付けるあれだ。まあ、それのスイーツ版、といったところかにゃ」
「な、ぁ…?!」
あっさりと語られるそれにザクロは顔を紅くさせる。
元々そういう話は得意ではなかった。
「その名の通り、生クリームを行為に使うんですよー」
「…それは…何というか……多方面から怒られそうな気もするが…」
笑顔で言うアカツキにザクロは困惑の表情を浮かべる。
どう考えても衛生的にも宜しくないだろうし、後が大変そうだ。
「だからこそプレイ、なんだぜ、ザッくん。ほんのちょっとのスパイス、いつもと違うことが良いのさ」
「…いや、しかしだな……」
「…何の話してんだよ?」
ふふん、と何故かドヤ顔のユズに反論しようとしたザクロの間を割って入ったのは不思議そうな表情のアンヤであった。
「生クリームプレイの話ですよ」
「ザッくんが知らないと言うからね。教えてあげていたのさ」
にこにこと言う二人にアンヤが、はっ!と馬鹿にしたように笑う。
「そんなんも知らねぇのかよ、ダッセェ!」
「…は?」
煽りの言葉をかけられ理性的でいられるほど、ザクロは温和でも大人でもなかった。
元来アンヤとザクロは相性が最悪なのである。
「もう理解した。貴様に馬鹿にされる筋合いは…」
「実践しなきゃ意味ねぇだろーが!」
「…っ、良いだろう!今すぐ実践してきてやる!」
売り言葉に買い言葉。
勢い良く立ち上がり、食器を片付けがてら厨房に向かう。
目的は勿論ホイップクリームだ。
「…あーあー」
知らないぜ、ボクは、とそんなザクロを見送りながらユズが笑う。
「ところでアンヤくんは生クリームプレイ、知ってるんですか?」
首を傾げるアカツキにアンヤがこちらも不思議そうに言った。
「あ?生クリームでホットケーキに絵を描くやつだろ?シン兄がケン兄をダブルラリアットしながら言ってたけど」
きょとんとするアンヤにアカツキとユズが苦い笑みを浮かべる。
当の本人だけが頭にクエスチョンマークを浮かべていた。
「…アンヤくん…」
「…アン坊、無闇矢鱈にザッくんを煽るの、やめたまえよ…」

「絶っっ対嫌でぇ!!!!」
「そう言わずに!頼む鬼ヶ崎!」
ピタリと閉められた押し入れに向かってザクロは懇願していた。
中で籠城しているのは恋人でもあるカイコクで。
ザクロが彼の部屋に入って告げた第一声、「生クリームプレイは知っているか」のそれだけで顔を引きつらせ、押し入れに閉じこもってしまったのである。
「少しだけで良いんだ!」
「甘いのは苦手だと再三言ってるよなァ?!!」
「舐めるのは俺だぞ、鬼ヶ崎!」
「匂いも無理だ吐く!!」
「すぐ換気する!風呂にすぐ行ってその後何もしない!約束するから!!…頼む、鬼ヶ崎!恋人の頼みを聞いてはくれないだろうか?!」
そんなやり取りを1時間近く続け、ようやっと押入れの戸が開いた。
「………いいか、15分でェ。それ以上は絶対にしない」
「わかった、約束する」
硬い表情のそれにザクロも頷く。
何だかんだ言ってカイコクはザクロに大変甘いのだ。
それこそ、生クリームのように。
渋々、といった様子で出てきたカイコクの手を引き、ザクロは優しく口付けた。



それから、15分を150分と間違え身体の隅々までデコレーションされトロトロに溶かされ食べられてしまうのは…カイコクが知る由もなかった、近い未来の話。
ーー
ちなみに、生クリームの日は9月6日なので、入れ替え。

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