行事に託つけていちゃいちゃしたい年下彼氏との攻防(レンカイ)

どうも今晩は、鏡音レンです 

ところでおれは今非常に困っている状況にあるわけで…

「にいさん、にーいさぁあん!!」
部屋におれの声が響く。
只今2月13日午後11時30分、風呂から上がった兄さんをTVの前まで連れて来たのは良かった。
「出来上がったPV見よう!」の一言に何の疑問を抱かなかったのも予想の範囲内…っていうかここは疑問を持たれちゃ困る。
マスターは今までの睡眠不足を取り返すように寝てるし優亜さんとリンとメイ姉ぇは女子会って言ってたし、ミク姉ぇとルカ姉ぇは…うん、考えないでおこう…バレンタイン直前だしな。
兎に角この場にはおれと兄さんの二人きり。
ここまでは計画通り…だったはずなのに、はずなのに!!
つか前もこんなことあったな?!
「ん…」
肩越しに伝わる重み、耳にダイレクトに入ってくる静かな寝息…そう、今兄さんはおれの肩に寄っかかって寝てんだ。
…今回は寝させないように頑張ったんだけどぉお!
「…相変わらずエロい」
思わずごくりと喉が鳴る。
開いたパジャマからチラチラ覗く白い鎖骨とか、微妙に紅い顔とか、そりゃまあ反応するよね!みたいな…おれたちがプログラムだからどうこうの話でもなく…なんつーかマスターの言葉を借りるなら『シチュエーション萌え』…?
「…ん、ぅ…」
「…って、そんな事はどうでも良くて。兄さん、兄さんってば!」
頭を振って、おれは兄さんを起こす作業に戻った。
つかコーヒー飲ませたしめちゃくちゃ喋ってたのに何で寝れんだ、兄さんは!
「兄さーん、起きてくださーい!」
「…んぁ…れ、ん…?」
必死の揺さぶりで兄さんは漸く目を開けた。
ぽやんとした顔で見上げる兄さんはめっっっちゃ可愛い…っていうか顔近い顔近いっ!!
思わずそらした目に映った時計の針は11時53分を指してた。
今回もギリギリじゃん…あっぶね。
っていうか23分も兄さんを起こし続けてたのか、おれ…。
「…?レン?」
「あ、いや、こんなトコで寝てたら風邪引くよ」
「…あー、そうだね。何か安心しちゃって、つい」
おれのそれに、にこっと笑う兄さん…。
それっておれの横が安心するって捉えて良い?!
「今回の曲、揺籃歌だし」
「…ソウダネー」
兄さんの答えにおれは棒読みになった。
今回の楽曲のテーマが揺籃歌…つまるところ子守唄で(癒やしが欲しかったってマスター言ってた)今画面に映ってるのはパジャマ姿のルカ姉ぇだ。
ミク姉ぇが「うちのルカがマジ聖母」って崇めたっけ。
ちぇ、どうせおれはルカ姉ぇみたいに癒やしもない、油断ならない狼ですよー。
「…レンの声、安心するし」
「…んっ?!!」
小さな声で言う兄さんをばっと見上げると、照れたように笑った。
そういえば兄さんが寝始めた頃流れてたのっておれの曲だっけ…。
もー、相変わらずほんと可愛いなぁあ!
「…ありがと、兄さん」
素直に礼を言うと兄さんもにこって笑った。
…あー、ホント兄さん癒し系。
「…あ」
「?どうしたの?レン」
慌てて時計を見上げるおれに兄さんがこてんと首を傾げる。
うっわ、59分…後10秒で日付変わるじゃん!
兄さんの笑顔に見惚れて本来の目的忘れるトコだった。
「…なあ、兄さん?」
「ん?何?レン」
後、7…6…5…。
「あのさ…」
4、3…。
ふわりと笑う兄さんに小さくキスをする。
ほんのちょっと驚いた顔の兄さんに笑いかける。
…2、1。 
「誕生日おめでとう、兄さん」 
耳元で囁くと兄さんは目を真ん丸にした後ふやぁあって笑って「有難う」って言った。 
あー、もうこの顔大好き!
「もしかしてそれを言いたくてこれ見てたの?」
「え?」 
TVのスイッチを切ってDVDを定位置に戻してると兄さんがくすくす笑ってそう言ってきた。
「あーうん、まあそんな感じ?」
にへらっと笑うと、兄さんはしょうがないなぁって感じで笑う。
「別に朝起きた時で良かったのに」
「誰よりも早く兄さんを祝いたかったのー」
おれの返答にきょとんとした兄さんがくすくすと肩を揺らした。
「相変わらずだねぇ」
「いーだろ、別に」
ぶすくれると、悪いなんて言ってないだろ、とまた笑う。
「じゃあ俺も」
「あ?」
はい、と差し出されるそれに首を傾げると「バレンタイン」と言った。
そーいやぁ昼間ルカ姉ぇとなんかやってたな…。
「これで俺からのチョコが一番最初だ」
上機嫌な兄さんにそういうトコ、と思いながら俺は渡すチョコ事その手を引いた。
「レ、レン?」
「おれ、風呂行くんだけど」
「…。俺はお風呂入ったんだけどな?」
とたんに兄さんが逃げ腰になる。
流石に同じ手には引っかからないか。
「レン…ッ?!ちょっと、待って…!バレンタインチョコあげただろ!」
「待たないしそれはそれー」
あっさり捕まえた兄さんを抱きかかえておれはにっこりと笑った。
「誕生日な兄さんにおれをプレゼント☆」
「何それおっさんくさい!!っていうかレンそれ前もやった…っ!!!」
往生際の悪い兄さんを黙らせるようにキスをする。 
そういうメタいこと言うのは嫌われるんだぜ、なんて!
(たまの記念日くらいいちゃいちゃしたいんですー!)

name
email
url
comment