溺レル甘味剤

ひゅうひゅうという声が白い部屋に響く。
靴を鳴らし、部屋に入れば彼が涙をいっぱいに溜めながらぐったりとベッドに躰を沈みこませていた。
「…鬼ヶ崎様」
「…っ」
彼、カイコクをパカは見下ろす。
睨みつけてくるカイコクに、懲りませんね、と呟き、パチンと指を鳴らした。
「…ぁぎッッぃ”!!!?、ッ、なっ…なんでぇ…ひぎッッ!?!ッふッぎッぃ”ぁ”…あ”ぅ”ぅ”え”ッ、ッや、やだッ、や”ッッぁ”…ぎ”ッ!!ッ、ッい”、ぃ”う”ーーッ、…!!」
「…鬼ヶ崎、愛している」
汚い喘ぎ声を漏らすカイコクに、忍霧ザクロを模したミミクリー・マンイーターが偽りの愛を囁く。
これは、パカが彼に課した地獄だった。
泣きじゃくる彼は飄々とした普段の様相とは全く違い、無様に弱さを晒している。
「俺を見ろ、鬼ヶ崎」
「…ぃや、だぁあ…っ!ふぁっ、やぁっ、ぃぐっ、ひっ、ぎ、ぃや…あっ、あっ、も、や…〜〜っ!!!!」
大きく躰が跳ねさせたカイコクはポロポロと涙を零し、荒い息を吐いた。
ミミクリーザクロが引き抜いた後はぽっかりと孔が開き、真っ赤に膨れ上がったそこからは朱混じりの精液が零れ落ちる。
「…ご自分が悪い事をしたと、理解できましたか?鬼ヶ崎様」
顎を掬い上げると彼は逡巡した後、こくりと頷いた。
随分と素直になったものだとパカは仮面の下で小さく笑う。
まあ、朝も晩も休みなく犯させたのだから無理はないだろう。
しかも快楽は一切無く本来受け入れるものではないそこに無理矢理挿れられ、強制的に精を吐き出させられるのだ。
直腸には想い人と見紛う偽物の体液を飲み込まされ、愛の言葉を囁かれる。
カイコクの体力も精神も限界値に近いはずだった。
「手当てを。こちらに来ていただけますか、鬼ヶ崎様」
「…っ」
彼の躰が強張る。
本能的な拒否、拒絶。
嫌だと叫びたいのをパカは知っていた。
「…もう一度、あれに犯されたいのですか?」
だからこそ、カイコクの耳に囁く。
ぞっとした顔で彼はパカを見上げた。
「…ぃ、やだ……」
「…鬼ヶ崎様」
「あ、れは…忍霧、じゃねぇ…分かっ、てる…のに…音、音が…気持ち悪ぃ…くちゅくちゅって……いやだ…俺、は…抱かれて…お、れ……」
カタカタと震えながらカイコクが吐露する。
「本当にそうでしょうか」
「…へ……?」
緩慢に、彼がパカに懐疑的な目を向けた。
「あれは確かに忍霧様ではありません。しかし、カクリヨの町で貴方も見た筈ですよ。…鬼の娘にナイフで恫喝する彼を」
「…!あ、れは…敵、だから」
カイコクが可哀想なほど狼狽する。
優しいと、自分には優しいだろうと信じているザクロの…本性に気付いているからこそ。
「…っ!忍霧は!仲間思いの奴でェ!俺、なんかよりも…ずっと……」
「だからこんな事はしないと?鬼ヶ崎様を痛めつけ謝る声も聞かず犯すことはしないと、仰るのですね」
「…っ」
びくりと肩が跳ねた。
ホロホロと涙を溢す彼にパカは手を伸ばす。
手当てを、と差し出すそれにカイコクは小さく首を振りながら己の手を重ねた。
哀れな人だと、思う。
「ああ、腫れていますね。可哀想に…」
うつ伏せにさせ、腰を高く上げさせてパカはふっくらと腫れ上がったそこを撫で上げた。
「…ひっ、う…!」
「薬を塗りますのでお待ちを」
小さな薬瓶の中に入ったクリームを手に取り、パカは表面から塗り込んでいく。
くちゃりと態とらしい音を立てながらゆっくりゆっくり時間をかけて彼を追いつめていった。
今までとは違う、確実に快楽を追わされている感覚が、カイコクを襲っている。
それを証拠に彼はもう息絶え絶えだった。
「…ぅんんんんっ!!!」
シーツを噛み、カイコクは精を吐き出す。
「おや。気持ち良かったですか?鬼ヶ崎様」
「…」
ふい、とカイコクが目をそらした。
それを許さずパカはミミクリーザクロの方に目を向けさせる。
「…また、彼に犯されたいのですね」
「…っ!!!…っ、よ…かった…気持ち良かった、から……や、めてくんな…っ!!」
縋るように彼がこちらを見た。
良い子、と囁やけばあからさまにほっとした表情を見せる。
「?!ゃ、なに…ふぁっ、あっあ、やぁあ!!」
「中も傷ついているでしょう?しっかり手当てしないと、ねぇ?」
鬼ヶ崎様、と囁き、液体を流し入れた。
時間をかけて馴らしたそこに自身を埋め込み、掻き回す。
「ぅあああっ!や、やぁあ!み、るなぁ!見ないで、くんな…お、ねが…おし、ぎり…おしぎりぃいっ!!」
助けて、と持ち上がる彼の白い手。
強姦なら言い訳も立とうが甘く甘く抱かれ一つ一つに感じているであろう彼は哀れな程だった。
「ぃ、あああああっ!!!」
嬌声と共に吐き出される精液と熱い息。
ぐったりとする彼の口に液体を流し入れる。
こくん、と然程抵抗もせず飲み込む彼にこれは媚薬だと告げ、黒い布で目を覆った。
「先程鬼ヶ崎様に塗りこんだ薬にも媚薬が含まれております。…それでは、良い悪夢を」
身支度を整え、パカは外に出る。
甘い絶望は…始まったばかりだ。(終)

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