ゆるゆる監禁アカカイキスゲームの話

 今日は趣向を変えてゲームをしてみませんか、と言う俺に、カイコクさんはきょとんとした表情を見せた。
「なんでぇ、アルパカごっこかい?」
「あはは、まあそんなもんです」
 笑う俺にも彼は暇だしなぁとほんの少し上を向き、「いいぜ」と笑う。
「そんじゃ、ま、ルールでも聞こうかねぇ」
 くすくすと笑うカイコクさんに、俺は音が付きそうな笑顔を浮かべた。
 そして。
「俺とキス、してください」
 そう、告げる。
「…キス?」
「はい。キスです」
「…。…詳しく聞かせてもらおうか」
 居住まいを直すカイコクさんに俺は指を立てて見せた。
 何だかんだ絆されやすい人だなあ、と思う。
 …まあそうでもなければこんなところで俺に監禁などされていないのだろうけれど。
「ルールは簡単です。三〇分間、俺がするキスに堪えて下さい。堪え切ったら今日は何もしませんよ」
「…堪えられなかったら?」
「そりゃもうあれやこれやの『お仕置き』が、ね?」
「…」
 にこっと笑って見せると、カイコクさんは何かを考え始めた。
 …嫌だとすぐに言ってしまえば楽だと思うんですけど…ね。
「…キス以外にゃ何もしねぇって約束は?」
「もちろん。触ったり、囁いたり、一切しません」
「…。…分かった」
 はあ、と溜め息を吐くカイコクさんは、追い込まれたことに気付いていないんだろう。
 さあ、ゲームのはじまり、はじまり。

「では、失礼して」
「…ん」
 カイコクさんの手を持ちあげて俺はちゅ、とキスを落とす。
 指の先から順番に、手の甲、手の平、腕と上がっていき、そのままとさりと押し倒した。
「ん、ぅ…」
 じゃらりと鳴る鎖の音と、鼻にかかったカイコクさんの甘い声。
 ちゅ、と軽いキスを唇に落とす。
 反応を見てもう一回。
「…んっ、ん…」
 ふに、とごくごく軽いそれはいつもの行為からすれば甘いものだろう。
 それを知っていてわざと何度も繰り返した。
「…ぁ…」
 薄く開いてくる口をそっと舐め、そのまま押し込める。
「んぅ、ふあ…ん…!!」
 奥に逃げようとする舌を絡めとった。
 上顎を舌で撫で、歯をなぞる。
 奥の方を擽り、舌先で突いた。
 全部、カイコクさんが好きなそれ。
「ふぁ、ぁぅ…っ、ぅ、ひ…っ、ぁ…!!」
 ちゅ、とリップ音を立ててカイコクさんから離れる。
 ぽやんとしたカイコクさんに笑いかけて、次は反対側の手を取った。
「んぅ、は、ぅ…っ!ぃ、りで…!」
 切なげな声でカイコクさんが呼ぶ。
 限界が近いのを分かっていて、俺はわざと無視した。
 囁いたりしませんって言ってしまいましたし、ね!
「ぅ、や…っんぅ、ふ、ぁん、ん、んー…っ!」
 さっきと同じように指先から順々に上がって行って軽いキスから深いキスを繰り返す。
「…はっ、ぁ…ぅ…」
 くったりしたカイコクさんに俺はにこっと笑った。
 …そして。
「…ぇ?」
 目を見開くカイコクさんの足を持ち上げ…足袋を口で脱がす。
「ひっ、待て、待って…や、ふ…っ!」
 必死に止めるカイコクさんの足の指に口付けた。
 足の甲、太腿にキスを落とし、着崩した着物の下、お腹にキスをする。
 そのまま胸、首と跡を残し、また唇に。
 それを左右繰り返せばとろっとろなカイコクさんの出来上がりだ。
 それでもまだイってないのはプライドか…よっぽどセックスが嫌なのか。
 でも、まだ3分あるんですよね!
「ふぇっ?!ひっ、やっ、ま…!!」
 ころん、と俯せにして、目を白黒させるカイコクさんの、羽織ってるだけになった着物を落とす。
 そして。
「ぅあっ?!ふ…ぁ、や、ぁ…っ!…〜〜!!!」
 肩にかかった入れ墨と、肩甲骨に吸い付いて跡を残せば、カイコクさんはぎゅうとシーツを掴み、声なき悲鳴を上げ、躰を丸めて…果てた。
 ここが弱いのを知っていて、わざと最後に残したんですよね。
予想通り期待しきっていた躰はカイコクさんの想いを裏切った。
作戦勝ちって言ったところでしょうか。
「…カイコクさん」
 ぐったりと躰を沈み込ませようとするカイコクさんに時計を見せつける。
「…二十八分〇九秒。俺の勝ちですね!」
「…」
「約束通り…お仕置き、しましょうか」
 にこっと笑って俺は睨む彼に…そう告げた。

 キスだけで俺に翻弄されるようになった、可愛くて愚かなカイコクさん。
 監禁生活も今日で六日目、さて何をしましょうか!

(たくさんたくさん甘やかして蕩かせて、早く俺に堕ちてきてくださいね、カイコクさん!!)    
(終)

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