嫉妬して監禁する、ヤンデレスパーク忍霧ザクロ(ザクカイ)

鬼ヶ崎、と扉を開けて冷たい部屋に向かって呼びかける。
しぃん、と静まり返った部屋はザクロのそれを吸収し、二度と返すことはなかった。
鍵を閉めて、またか、とザクロは小さく息を吐く。
ザクロがカイコクをここに監禁してもうどれくらい経ったろうか。
その間、彼は性懲りもなく、何度も何度も逃げては隠れているのだった。
一番最初は壊れたソファの後ろ、次は錆びたロッカーの中、その次は…。
最初の内は外に出てしまったのかと慌てもしたが、この部屋からは出られないと理解してからはもうすっかり慣れてしまった。
…あまり慣れすぎるのもどうかと思うのだけれど。
一度、たった一度だけ逃げなかった日が合ったから、その日はうんと褒めて何もしなかった。
酷く犯した次の日だったから、体力的なそれもあったのだろう。
それでも逃げなかった彼を褒めてそれが良い事だと教えこんだのに。
マスクを外しながら口元に手をやる。
傷口を触るのは昔から不安になった時の癖だった。
「…。鬼ヶ崎、何処にいる」
ひたひたとザクロは部屋を巡る。
微かに聞こえた軋んだ音に口角を釣り上がらせた。
ステルスゲームはザクロの十八番だと…カイコクも知っているだろうに!
「…みーつけた」
「…っ!!ぁ…あ……」
ギィ、とシャワー室の扉を抉じ開ける。
黒曜石の綺麗な瞳が絶望に塗り込められ、目一杯見開かれた。
「うわぁああっ!!!」
大声を出し、カイコクはザクロの横をすり抜けようとする。
…ザクロが傷付けた足で、逃げられるはずもないのに。
羽織ることが精一杯の、ボロボロの着物の裾を踏みつけた。
ぐん、と引っ張られたカイコクが無様に転ける。
「あぐっ?!」
「…言ったよな、鬼ヶ崎。逃げるな、と」
最初に刺した太腿の傷をぐり、と抉ってやれば彼は痛みに呻いた。
そんな彼をシャワー室に引っ張り込み、水をかけてやる。
「っ!!やめ…っ!おし、ぎりぃ…っ!!」
「五月蝿い」
「あぐっ!がぼっごぼっ!!」
喚くカイコクの口にシャワーヘッドを押し込んだ。
勢い良く彼の口内に水が入り込む。
「げほっ、ごほっ!!…はーっ、はぁ…っ!!」
がくりと力が抜けた所でシャワーヘッドを引き抜けばカイコクは咳き込み、荒い息を吐き出した。
ひゅぅ、と器官から息が漏れる。
「こちらも綺麗にしてやる」
「…は、ぅ…ぇ…?」
混乱しきった彼の腰を高く上げさせ、既に傷の付いた後孔にシャワーヘッドを押し付けた。
「…ぁ、あ…!嫌、だ…やめ、ろ…っ!」
「五月蝿いと言っているだろう!」
「~~っ!ぁああっ!!」
くぷりとシャワーヘッドを入れ込めば、カイコクは短い悲鳴を挙げガタガタと震える。
「ふぅ…ぃ…くる、し…っ!!」
「良い格好だ。まるで子を孕んだようで」
くすくすと笑い、ザクロは膨らんだ腹を圧した。
黒い髪が揺れる。
「止めて、くんな…忍霧…っ!!」
「逃げる貴様が悪いんだろう。これは仕置きだ」
シャワーヘッドを引き抜いて、すぐさまバイブを入れ込んだ。
ぐちゃぐちゃと掻き回し、泡立てる。
「ぅう~~…!!…も、ゃだ…っ!」
無理矢理に前立腺を引っ掻き回し、イきたくもないのにさんざイかされたカイコクは子どものように泣きじゃくった。
それを無視し、ザクロはバイブを突き刺したまま、己を埋め込もうとする。
「?!待、て…そんなの、無理…!」
「貴様に拒否権は、ない!」
「や…ぁあ"ああっ!!!」
振り仰ぐカイコクを一蹴し、ザクロは奥まで突き挿した。
背中を反らせ、赤い血をポタポタと垂らす。
悲鳴を上げるカイコクの結腸を抉り、前立腺をこすり上げ、逃げようとする彼を何度も引き寄せて犯した。
「出す、ぞ!」
「…ひぐ…っ、ぁああっ!!…ぁ……」
最奥に精液を叩きつけた途端、カイコクはふわりと意識を失う。
ぱしゃりと赤が含んだ水にすっかり不健康になった色の躰が沈み込んだ。
「…。全く」
小さくため息を吐き、ザクロもようやっとそこから引き抜く。
こぽりと音を立て、水と精液が流れ出た。
手短に綺麗にしてやって、ザクロはカイコクを抱きかかえる。
ソファに寝かせてやり、自身は近くの椅子に腰を掛けた。
まさかこんなにも墜ちてこないなんて、と小さく息を吐く。
せっかく手に入れたと思ったのに。
…彼を、扉の内側に入れこむことが出来たと…喜んだのに。
怯えた目は一向にザクロを映そうとはしなかった。
彼の目は今も未来を見ている。
ザクロのいない…未来を。
それは、耐えられないと…そう思った。
「…こ、こ……どこでぇ…」
「鬼ヶ崎?」
ようやっと目覚めたのか、小さな声が聞こえてザクロは振り返る。
「…目覚めたなら仕置きの続きだ。貴様はまだ分かっていないらしいからな。徹底的に…」
「…っ!…だ、れ…ぃや…だ…こわぃ、こわいこわいこわい!!!くるな、やめろ、…すけ、て……!」
「…え」
そう言いながら立ち上がり、肩を押した途端だった。
半狂乱になったカイコクが己の下で暴れる。
だがそれは本当に些細なものだった。
今までのように、体力が奪われたが故の力ない抵抗などではなく、まるで子どもがするような、そんな。
「鬼ヶ崎?」
「…おし、ぎりぃ…?ぅあ…な、んで……も、わかんねぇ…っく、ぅう…も、ぅ…やだぁ…っ!」
呼び掛ければカイコクはザクロを見上げ、嫌々と首を振った。
ザクロのことは分かるのに、彼はどこか舌足らずで。
カイコクの綺麗な目がぐらぐらと揺れる。
どうやら意識化で今の時間軸と幼少期のそれとがごちゃまぜになっているようだった。
「…ぃ、やだ…やだぁ……っっく、ぃう、ひっ…とぉさ、かぁさ…!」
泣きじゃくり、何かに縋るようにカイコクが手を伸ばす。
その手を取ってザクロは嗤った。
「泣くな。…俺がいるだろう?」
「ぅ、え……?」
きょとん、とこちらを見るカイコクは酷く幼く見えた。
ザクロよりもずっとずっと幼く…まるで、ミミクリー・マンイーターの時に現れた彼のようで。
「良い子にしていたら痛いことはしない。お前が俺から逃げる、悪い子だからいけないんだ。だから罰を与えるために今まで痛いことをした。…分かるな?」
「…お、れが…にげ、る……から…?」
「俺は優しくしたい。…良い子になってくれ、鬼ヶ崎」
ぱちくりと目を瞬かせるカイコクの肩から手を離し、そのまま髪をそっと撫でる。
一瞬びくっと躰を揺らした彼は、逡巡した後、こくりと頷いた。
「…な、ぁ」
「ん?どうした」
「…いたい、こと…しねぇか…?」
不安げに瞳を揺らし、必死に聞くカイコクにザクロは小さく笑う。
ああ、と頷き、黒い髪を撫でた。
「鬼ヶ崎が二度と逃げないと誓うなら」
軽く口づけ、もう一度聞く。
良い子に出来るか、と。
「…でき、る」
「…そうか」
ぎゅう、とザクロの服を掴んで言うカイコクにそれだけを言い、ザクロはそれをそっと引き剥がした。
「…おし、ぎり…??」
「昼には戻る」
捨てられた小動物のような顔をするから、思わず笑い、そう言ってやる。
重い扉を開け…ザクロは部屋を出た。




数時間後に戻ってきたザクロは、鬼ヶ崎、と室内に向かって呼びかける。
そうは言って、どうせまた何処かに逃げているのだろうと足を踏み出した…その時だった。
「…おし、ぎり?」
ふわりとした声が聞こえる。
「…鬼ヶ崎?」
声のした方へと歩みを向ければ、よたよたとカイコクが近付いてきた。
傷付けられた足を懸命に動かし、彼はおっとりと微笑む。
「よかった、おしぎりだ」
「…鬼ヶ崎。どうして」
「…。まってろ、っていったから。…そりゃ!あさとはちがう、へやだけど」
「…」
「っ、くらやみが、こわかったんでぇ!…だから……。…なぁ、おれ…いいこにしてたぜ、おしぎり」
驚きに目を見開くザクロを不安そうにカイコクが見上げた。
褒めてほしいと。
ただ、優しくしてほしいと。
…ただ、愛してほしいと。
言外に伝えるカイコクの目にはザクロしか映っておらず、思わずああ、と声が漏れる。

やっと、堕ちた。

愛した人がようやっとこちらを見てくれた!とザクロは笑みを浮かべる。
「…?おし、ぎり…?」
「…あぁ、すまない。良い子にしていたんだな、鬼ヶ崎。偉いぞ」
まだ恐怖を瞳に浮かべたカイコクに、ザクロは小さく笑みを見せ、頭を撫でてやった。
ホッとしたようにカイコクが笑う。
それは今まで見た笑みの中でも特別に幼く、歪で。
「痛いことはしない。怖いこともしない。…愛してやろう…鬼ヶ崎」
おいで、と手を広げる。
頷いた彼が寄ってきてザクロに身を委ねた。
「愛している」
頭を撫でて、そっと上を向かせる。
口元に触り、軽く口づけるとくすぐったそうに笑った。
カイコクの声が、暗く冷たい部屋に響く。

…扉は、もう開かないのだ。


鬼は血染めのナイフによって切り裂かれた。
その昔、掠奪され、柘榴の実を食べた豊穣神の娘は冥界の神の手に堕ちたのだという。

鬼さんこちら、手の鳴る方へ
手の鳴る方はセツブンソウ咲き誇る地獄(らくえん)だと、誰が知っていたっけね?
鬼さんこちら、手の鳴る方へ
手の鳴る方は柘榴の実を食べた娘が過ごした冬と同じと、誰が気付いていたっけね?

鬼さんこちら、手の鳴る方へ
…手の鳴る方に導かれた、愚かで哀れな鬼は…果たしてどちらだったのだろうね!!

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