エクストラステージ:ひとり鬼ごっこ(パカカイ♀)

「はぁっ…は、ぁ……っ!」
彼女の荒い息が部屋に響いた。
「ぅぐ、ぁ……は…」
足を引きずりながら、彼女は走る。
何故こんなことになったのか、ぼんやり浮かんでは消えた。
今はこのゲームを終わらせなければいけなかった…仲間のために、もっといえば自分の命の為に。

事の始まりは、少し前。

パカに連れてこられた部屋は変わった構造をしていた。
小さく眉を顰めた彼女、鬼ヶ崎カイコクにパカは「ゲームの説明と参りましょう」と言う。
不服そうな表情をしていたカイコクだったが素直にパカを見上げた。
普段なら絶対に従わないが…仲間の為にゲームをクリアしなければならないのである。
仕方がない、と覚悟を決めた彼女に、パカは人差し指を立てた。
「ルールは簡単。部屋にある宝箱から鍵を取り、出口を探して下さい。制限時間はございません。…ただし、それではあまりにも易しい」
「…まあ、そうだろうねぇ?」
パカが提示したルールに、カイコクはそう返す。
ただただ鍵を取り、出口を探す…しかも見えている扉は2つだ…だけのゲームなぞ、見ていて面白くはないだろう。
何かある、とカイコクはパカを睨んだ。
「ひとつ、間違った鍵を取る毎にペナルティを付加します。加えて20秒毎にお香が焚かれます。どのような効果かは…まあやれば分かるでしょう」
「…。…ペナルティの内容は?」
「そうでございますねぇ。では、痛みを少々」
「…痛み、ねぇ」
ふむ、と考えるが、思考を巡らせたところでやらなければいけないのは変わらない、と放棄した。
「痛みは慣れてる。それよりさっさとやってさっさと終わらせてぇ」
「…分かりました。それでは、ゲーム開始と参りましょう」
パチン、とパカの指が鳴らされる。
部屋に取り残されたカイコクはとりあえず、と部屋の隅に向かった。
「…パスワードかい」
小さな箱にはご丁寧にロックがかかっており、カイコクは嫌な顔をしてみせる。
メンバーの数、と書かれた紙に息を吐き出し、【08】と打ち込んだ。
自分を抜いてだろうか、と思ったが箱は正解を示し、小さな電子音を発して開く。
取り出した鍵を持ち、扉に向かった…途端だった。
「…こりゃあ…」
ふわりと香るそれにカイコクは眉を顰める。
鼻孔を擽る香りは脳を揺らした。
躰の深が熱くなる感覚に蹈鞴を踏む。
一度、たった一度使われたそれと同じ感覚に顔を歪めた。
「…悪趣味」
小さく呟いたカイコクは急がなければと走り出す。
部屋の隅にある扉に鍵を突き刺した。
回りもしないそれに舌打ちし、もう片方の扉に向かおうとした…その時。
「ぅぐあ?!!」
パン、という軽い発砲音と共に激痛が右足に走る。
撃たれたのだ、と混乱する頭で思った。
「…はは、これが…ペナルティ…」
乾いた笑いが溢れる。
香りはどんどん強くなっていた。
頭が回らない。
それでもやらなければ、と足を引き摺って走った。
「ひぎっ?!」
もう片方の扉も開かず、今度は左足に激痛が走る。
よろよろと鍵の箱に近づき、パスワードを打ち込んで鍵を取り出した。
鍵を開く、扉は開かない。
「うぐっ…ぁ…!」
飛び出たナイフで足を切られた。
痛みは酷いはずなのにじくじくと脳を支配するのは快楽だけで。
こんなの嫌だ、とカイコクは恐怖する。
「あぐ、ぅ…!」
ナイフはカイコクの左足も傷付け、間違いを知らせた。
震える手で3つ目の鍵を手に取る。
ポタポタと足から垂れる血は床に歩いた跡を残した。
扉に近づき、祈るように鍵を回そうとする。
が。
「いぎゃぁあ?!」
ぴくりとも動かないそれに絶望を感じる間もなく、痛みが彼女を襲った。
ドアに縋り、反射的に振り返る。
ピッチングマシンのように壁から飛び出していたのは鉄パイプで。
ああ、足を打たれたのかと思いながら鍵を抜き取りふらふらともう片方の扉へと向かった。
快楽が躰を蝕み、愛液が溢れ出す。
躰はとうに限界で、動くのもやっとのほどなのだ。
「…ぅああ…っ!あ"…!」
鉄パイプは血を流すカイコクの足へ無慈悲に振り下ろされ、どさりと床に身を投げだした。
それでも動かなければ、と這いずりながら最後の鍵の箱に向かう。
思考はほぼ残されてはいなかった。
痛い、怖い、嫌だ、気持ち良くなりたい、気持ち悪い、躰が熱い、恐い、こわい、コワイ…!
彼女の思考は恐怖と快楽に飲まれ、無意識に涙を流す。
カタカタ震えながら鍵を刺した。
小さな音を立てて鍵が回る。
「…!や、った…!」
ようやっと終わる、と安堵したカイコクを…地獄に堕とすには十分だった。
「…ひっ」
小さく喉を鳴らし、後退る。
扉を閉め、ガタガタ震える躰を抱きしめた。
部屋にいたのは、グロテスクな触手だったのだ。
「…すけて、助け…!」
頭を振り、よたよたと走る。
縋るように最後の扉に鍵を刺した。
カチリ、と音を立て開いたドアの向こうは…がらんどうの部屋。
「…ぇ…?」
立ち尽くすカイコクに、残念、という声が降り注いだ。
「…ゲームオーバーでございますよ、鬼ヶ崎様」
「…き、さま…!」
ギッ!といつの間にか現れたパカを睨む。
「嘘つき!出口なんてどこにも…!」
「…ございますよ、出口は」
「…は…?」
告げられた言葉を理解する前にパカが部屋に突き飛ばした。
「…な、に…す…!」
声を荒げかけたカイコクが止まる。
がらんどうに見えた部屋には…大量の玩具が置いてあったのだ。
「…ぁ…あ……!」
顔を青ざめさせ、逃げようとするカイコクに…パカは容赦がなかった。
「や…っ?!」
お香の液をカイコクの躰にぶちまける。
鍵のような何かが床に転がった。
「これが、正規の鍵でございますよ…鬼ヶ崎様」
「ひ、きょう…も…の…!」
泣きじゃくりながら彼女は叫ぶ。
…叫んだ所で、彼女がゲームオーバーになった事実は…変わらなかった。
敏い彼女は分かっているのだろう。
これから…自分の身に何が起こるのかを。
「嫌だ、嫌…やだぁあ!!ひっ、や…すけて、助け、て…っ!!」
「…おやおや」
感情は理性を振り切り、幼子のように助けを求める彼女にパカは嗤った。
四つ這いで部屋の隅まで逃げるカイコクを追い詰め、チェックメイトですよ、と告げる。
「ぅぁああっ!!ぃぎ…ひっぐ…!」
傷付いた足…ではなく、尻を酒瓶で殴り付けた。
「ぅううっ!!!やだ、や、ぁ…!!い、だいぃい…!」
下着を取り去り、アヌスに電動ディルドを無理矢理押し込む。
泣きじゃくる彼女をころりと仰向けにした。
「…ぃや、や…こんな…の…!気ぃ、狂う…っ!!」
「クリア出来なかったのは貴女様でございますよ…鬼ヶ崎様」
尿道にバイブを押し込まれ、クリトリスと乳首にローターを取り付けられたカイコクに残酷に告げた。
…それから。
「…ひっ」
「…また、お迎えに参ります」
ピストンバイブを…ゆっくり押し込みながらパカは囁く。
傷付けられた足が弱々しく抵抗を見せた。
奥まで埋め込み…アヌスのディルドとともに固定する。
カチリ、と全ての玩具のスイッチを、入れた。
彼女の声なき悲鳴が霧散する。
「ふぁああっ!!や、だぁああっ!イ、く…やだぃや、~~っ!!」
催淫剤に追い詰められた躰は簡単に絶頂を迎えた。
だが機械は止まらない。
「も、もぅイったぁあ!やだ、やだ止めて、止めて、くんなぁ!!ぁあああっ!ど、して…なんでぇ?!!」
部屋に響くはカイコクの嬌声と単調な機械音。
彼女は気付かない。
パカが出ていってしまったことを。
触手が部屋から出、この部屋に入ってきていることを。
…そして。
数時間機械に嬲られた躰を…触手に好き勝手犯されてしまうことを、彼女は…知らない。
…カイコクの【ゲーム】は、始まったばかりだ。

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