ワンドロ/放課後・カフェ

文化祭も終わった放課後、久々に一緒に帰ろうと声をかけた彰人は、その相手から付き合ってほしいところがある、と言われ、目を丸くさせた。
冬弥がそんなことを言うのは珍しい。
あまり自分からあれがしたいこれがしたいと要望を口にしない彼だから、全力で聞いてやりたいと、そう思った。
「いーけど。どこ行きたいんだ?」
「…。…ス○バに行ってみたい」
「…○タバ?」
ややあって冬弥から出てきたそれはまあ行ったことはないだろうな、と思う場所で。
おしゃれカフェの代名詞でもあるから似合いそうではあるけれども…珍しいにも程がある。
「また、なんで」 
「クラスの皆が話していたんだ。それで、気になって」
「…あー…」
おずおずと話す冬弥に、彰人は天を見上げた。
確かに一般の高校生が行くのを考えれば其方のほうが無難だろう…彰人はあまり行かないが。
どうやら存在すら知らなかったらしい、珈琲好きな彼が気になるのは必然と言えた。
たまには良いかと、少しばかり心配そうな冬弥の手を引く。
「…彰人?」
「なんだよ、行くんだろ」
「…!ああ」
ふわ、と笑みをこぼす彼に、可愛い奴、と彰人も笑った。
放課後デートってやつだな、なんて笑えばどんな顔をするんだろうか。

(彼が行きたい、初めての場所

そのお供に選んでくれたことがこんなに嬉しいなんて!)


その後、珍しく楽しそうな彼がへにゃとした笑みで「…彰人、見てくれ。猫さんだ」とコップを見せ、スタ○もたまには良いなと真顔になるなんて…今はまだ知る由もない。

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