がるこす

『ねーねー、プロセカに消失入ったこすもさぁん』
『…何、その地味ーに煽ってるやつ』
ボクのどーってことない一文にも律儀に返してくれるこすもんに思わず笑顔になった。
『ボク、馬刺し食べたい』
『前の文いった?!』
『もー、分かってないなぁ。可愛いボクに奢って♡』
『自分で可愛いとか普通にないんだけど』
文章からも分かる引きっぷりにボクは思わず笑ってしまった。
そーいうとこだよね!
『ねー!馬刺しー!』
『もー、がるなんはさぁ、ぼくより稼いでるくせにさぁ、年下だからってこういう時ばっかりさぁ』
『そこも嫌いじゃないくせにー』
『はいはい、言ってて』
適当に返されるそれに、画面の向こうでちぇーなんてブスくれてみせる。
言ったところで見えてはいないんだけど。
『っていうか何で馬刺しなの。言いたいだけの女子大生じゃあるまいし』
『えっ、普通に美味しいじゃん、後高い』
『高いものをわざわざ奢らせようとしないで』
終わり、とばかりに返ってきたそれにボクは分かった、と返事をしようとした。
…けれど。
『…まあ、でも』
続く文章にボクはにまぁと笑う。
こすもんのそういうトコ、ボク好きだよ!
(ま、本人には絶対に言ってやらないんだけどさ!)
『…チキンなら今度奢ってあげても、良いよ』


「ファ○マ!ファミ○が良い!」
「え、良いけど。あきこロイド使ってたのに良いの?」
「え、気にするとこそこなの??」


~~~~
寒い朝。
吐く息が白くなるほど寒い…そんな日に。
「こっすもーん!」
「うわっ、がるなん!」
ボクらは廃都アトリエスタ…ではなく、良くあるコンビニを目指していた。

「コンビニチキンっ、コンビニチキンっ」
「がるなん、チキンそんな好きだっけ?」
るんるんとスキップすればこすもんが不思議そうに声をかけてくる。
分かってないなぁとボクは指を立てた。
「こすもさんが奢ってくれるから嬉しいんじゃない」
「…何それ」
あっさり言えばじっとりと見つめてくる。
えへへー!と笑ってその腕に抱きついた。
…と。
「…あの子達可愛いー!」
きゃぁ、という声が聞こえてボクは振り向く。
嫌そうなこすもんを隠しつつ、知ってるー♡と手を振った。
やっぱりファンサも大事だよね!
「…がるなんさぁ」
「ん?」
はぁ、と吐き出される溜め息に首を傾げて、あ、とボクは声を上げる。
「可愛いって言われてないからスネてる?!大丈夫、ボクの次に可愛いよ!」
「いや、言ってないからね?」
割と食い気味に返してきたこすもんは、もう!と人差し指をくるくるさせた。
「ぼくはさぁ、そういうとこさぁ」
「またまたぁ、嫌いじゃないくせに!」
ちょっとお説教モードのこすもんに、にまにまと言えば平然と言葉を紡ぐ。
…口元が緩むのが止められなくなるからやめてほしいんだけどな?
「嫌いだとは言ってないけどさぁ?」
(そーいうとこなんだけどなぁ)
嫌いじゃないなら好き、で良いんだよね?
そういうことだよね!
「…え、なに、ニコニコして」
「なぁんにも!さ、コンビニ行こ、コンビニ!」
笑いながらこすもんの背を押す。
冷たい風がボクらの間をすり抜けた。

(それって、幸せっていうんだってさ!)

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