ホワイトデーザクカイ

すぅ、はぁ、と彼の部屋の前で深呼吸をする。
本日3月14日、所謂ホワイトデーだ。


「…鬼ヶ崎!いるか!」
「…はいはぁいっと…。…なんでぇ、こんな遅くに」
ザクロの呼びかけに対し、ゆるい感じで出てきたカイコクはきょとりとこちらを見つめた。
その彼に、隠していたものを差し出す。
「…こりゃあ」
「今日は、ホワイトデーだから、な…」
ザクロが差し出したのは小さな花束であった。
ベゴニアとスターチス、という変わった取り合わせだが、彼はふは、と笑ってみせる。
どうやら意味を知っていたようだ。
「…まあ、毎年熱烈なこって」
「…っ。俺は、いつだって本気だ」
可愛らしい笑みのカイコクに、ザクロは真面目な目線を送る。
ベゴニアの花言葉は愛の告白、スターチスの花言葉は変わらぬ心。
赤く凛としたベゴニアはカイコクによく似ていた。
それを、自分の瞳と同じ色のスターチスで囲ったのは意味がある。
「俺の愛の告白は、いつも変わらない。…それを、伝えたかった」
「…忍霧」
「…すまないな、夜遅く、に…?!」
立ち去ろうとするザクロの服を、カイコクが引っ張った。
勢い良く振り返れば、彼が、まあなんだ、と語彙を濁す。
「…茶ァくらいなら…淹れてやらんでもねぇ、けど…?」
「…貴様、それは誘っているのか?」
「…。…おやすみ」
カイコクの精一杯のお誘いに首を傾げてしまい、彼は部屋に入ろうとしてしまった。
慌ててその手を引く。
「ま、待て!…貴様の淹れた茶が飲みたい」
「…。…特別、な」
まっすぐな目を向ければカイコクがふいと目を逸らした。
今日はとことんザクロに、甘いらしい。


なんと言っても今日はホワイトデー、なのだから!

(ちょっぴり自分の気持ちに素直な、特別な日)

name
email
url
comment