ワンドロ・柔軟剤/ハグ

ふわり、いつもの香りが鼻腔を擽る。
何となく、その香りだけで冬弥だと分かって彰人は口角を上げた。
「…冬弥」
「…!彰人」
背後から抱きつけば彼はびくりと背を震わせる。
珍しいな、と覗き込むと冬弥は小さく首を傾げた。
「…いつもと香りが違う」
「あ?…あぁ。そういや、柔軟剤変えたっつってたな」
彼の小さな声に今度は彰人が首を傾げ、ややあってそう言う。
何だかいつもと違う、と愚痴る絵名に、母親が「文句あるなら自分で買いに行きなさいな」と笑っていたっけか。
彰人は別にどちらでも良かったが…冬弥は違ったらしい。
耳も敏感なら鼻も敏感といったところだろうか。
「香りが違ってもオレはオレだろ」
「…そうだが」
むう、とする彼に苦笑しつつ、少し離れた。
不思議そうな冬弥に向かって、ん、と両腕を広げる。
「…彰人?」
「たくさん香ってりゃ慣れるかもしんねぇし」
「…!…」
目を見開いた彼がおずおずと近づき、彰人の腕の中に収まった。
ぎゅっと抱きしめ、ついでに彰人も冬弥の香りを楽しむ。
「どうだ?慣れそうか?」
「…ん……。香りは違うが…体温や鼓動は彰人、だな」
「なんだ、それ」
小さく笑う冬弥に、彰人もくすくすと笑った。
揺れる髪が頬に当たって擽ったい。
たまに、柔軟剤を変えるのも良いな、と思ったのだった。

将来、互いの香りが良いと譲らず、ひと悶着あるのはまだ二人が知らない話!!



「ねー、イチャイチャするなら人目がつかないとこでやってくんない?」
「ふふ、二人は仲良いねぇ」
「?!レン?!カイトさん?!…彰人、はな…!」
「やなこった。イチャイチャしてるとこに来る方がわりぃんだよ」

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