隔週ワンドロ・春/キャンディ

「わりぃ冬弥、遅くなった」
「…彰人」
少しホームルームが長引いたのもあり、慌てて彼の教室に向かう。
ドアから声を掛ければ、読んでいた本から冬弥がふ、と顔を上げた。
柔らかい微笑みにほっとする。
「そんなに待ってはいない。…気にするな」
「んなら良かった。…なんか甘い匂いしねぇ?」
冬弥のそれに笑みを向けつつ近付けば微かに甘い匂いがして首を傾げた。
目の前の彼は香水を付けるような質ではない。
ならば何故?
「…。…ああ。暁山と昼食を取った時にキャンディを貰ったんだ。パッケージが可愛かったから買ったが、味が思っていたのと違ったらしい」
「あぁ…それでか」
冬弥が喋る度にコロコロと音がし、なるほど、と思う。
瑞希とは文化祭で仲良くなったのだが、その人懐っこい性格に冬弥も安心しているようで瑞希が学校に来ている時は昼食を共にしたり放課後に話をしたりしていた。
まあ冬弥は誰にでもこの距離感だが…それは置いておいて。
「何の味だよ?」
「…。…彰人が好きな味だ」
「…はぁ…?」
単なる疑問を含み笑いで返され、彰人は眉を寄せる。
待たせた仕返しのつもりだろうか。
「…ヒントは?色とか」
「…茶色…だろうか」
「あ?」
沸切らない答えに首を傾げると冬弥は「口に入れた時は茶色だったが今は分からない」と言った。
「んじゃあ見せてみろよ」
「ああ」
彰人のそれに、冬弥は素直にかぱりと口を開く。
キラキラした黄土色のそれに思わず喉が鳴る。
「んんぅ?!」
無意識に吸い寄せられ、無防備に開いたそれを塞いだ。
甘い口内を舐め回し弱いところを擽り飴を自分の元に絡めとる。
「…っ、ふ…」
「…甘ぇ…」
呟いたそれに冬弥がムスッとした顔をする。
ころりと口内で転がしたそれは、確かに彰人が好きなそれだった。


だってねぇ
甘い甘い冬弥は、彰人の大好物なのだから!


「実際舐めても味分かんねぇんだけど…なんだ?これ」
「…春限定パンケーキ…」

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