ミクの日

どうも今晩は、初音ミクです☆

ところで私は今非常に困っている状況にあるわけで…

「ルカちゃん?ルカちゃぁあん!!」
部屋に私の声が響く。
只今3月8日午後11時30分、お風呂から上がったルカちゃんが「出来上がったPVを見ましょう!」っていうからいそいそとお菓子やらジュースやら持ってTVの前に陣取った、それまでは良かったの。
マスターは今までの睡眠不足を取り返すように寝てるし優亜さんとリンちゃん、お姉ちゃんは次の衣装合わせって言ってたし、レンくんとお兄ちゃんは…うん、考えないでおこう…ホワイトデー直前だしね。
兎に角この場には私とルカちゃんの二人きり。
せっかくだからイチャイチャ出来るーなんて喜んでいたのに!それなのに!!
「ん…」
肩越しに伝わる重み、耳にダイレクトに入ってくる静かな寝息…そう、今ルカちゃんは私の肩に寄っかかって寝てるの。
…こんな拷問初音さん知りませんけどもね?!!
「…相変わらずエロいなあ……」
思わずごくりと喉が鳴る。
開いたパジャマからチラチラ覗く白い鎖骨とか、私にはない豊満な谷間とか、微妙に紅い顔とか、そりゃまあ反応するよね!みたいな…私たちがプログラムだからどうこうの話でもなく…なんというか…マスターの言葉を借りるなら『シチュエーション萌え』…?
あ、言っときますけども女子だって反応するんだよ? 
性欲が男の子だけのものなんて思わないでほしいなっ!
「…ん、ぅ…」
「…って、そんな事はどうでも良くて!ルカちゃんってば!」
頭を振って、私はルカちゃんを起こす作業に戻った。
「ルカさーん、起きてくださーい!」
「…んぁ…ミク、ねぇさま…?」
必死の揺さぶりでルカちゃんは漸く目を開けた。
ぽやんとした顔で見上げるルカちゃんはめっっっちゃ可愛い…っていうか顔近い顔近いっ!!
もーホント無防備なんだから!
襲われても知らないからね、私に!
「…?ミク姉様?」
「あ、いや、こんなトコで寝てたら風邪引くよ、ルカちゃん」
「…そうですわね。何だか安心してしまって……」
私のそれに、にこっと笑うルカちゃん…。
それって私の横が安心するって捉えて良い?!
「今回の曲、揺籃歌ですものね」
「…ソウダネー」
ルカちゃんの答えに私は思わず棒読みになった。
今回の楽曲のテーマが揺籃歌…つまるところ子守唄で(癒やしが欲しかったってマスター言ってた)今画面に映ってるのはパジャマ姿のお兄ちゃんだ。
レンくんが「うちの兄さんがマジ女神」って崇めたっけ。
ちぇ、どうせ私はお兄ちゃんみたいに癒やしもない、油断ならない狼ですよー。
まあ勝とうとも思わないけどね?
「…ミク姉様の声、安心しますし」
「…んっ?!!」
小さな声で言うルカちゃんをばっと見上げると、照れたように笑った。
そういえばルカちゃんが寝始めた頃流れてたのって私の曲だっけ…。
もー、相変わらずほんと可愛いなぁあ!
「…ありがと、ルカちゃん」
素直にお礼を言うとルカちゃんもにこって笑った。
…あー、ホントルカちゃん癒し系。
「…あ」
「?どうしたの?ルカちゃん」
時計を見上げたルカちゃんが小さな声を上げるから私は首を傾げた。
何かあったのかな?
「…あの、ミク姉様?」
「ん?何?ルカちゃん」
改まったように正座するルカちゃんに私は聞く。
「あの…」
珍しく歯切れが悪かったルカちゃんが思い切ったように顔を上げた。
え、と思う私の頬にルカちゃんの唇が触れる。
「…記念日おめでとう御座います、ミク姉様」
耳元で囁かれて、思わず頭が混乱した。
記念日?
誰の??
もしかして…私?
バッと電子時計を見れば指していたのは3月9日。
って、もしかして!
「…ミクの日?!」
「…はい」
ルカちゃんのはにかんだ笑顔に私は色んなものが湧き上がるのを感じる。
もーー可愛いんだからこの天使はー!
「…ありがと、ルカちゃん!」
思わず抱きつく私に、ルカちゃんは、はい、と笑ってくれた。


「もしかしてそれを言いたくてこれ見てたの?」
「え?」
TVのスイッチを切ってDVDを定位置に戻してるルカちゃんに聞けばキョトンとした後ふにゃりと笑う。
「…ええ、そうですわ」
「別に朝起きた時で良かったのに」
「…誰よりも早くミク姉様を祝いたくって」
ルカちゃんの返答に一瞬理解が遅れた。
…ほっんとに可愛いんだから…。
「ねぇ、記念日のミクさんに何かプレゼントないの?」
「え、えぇ…?」
ずい、と迫れば困った顔のルカちゃんがぎゅっと抱きついてくる。
えー待って可愛すぎて困るんだけどどうしたら良い?
頂いちゃえば、良い?
「…私からのハグ、というのは…きゃっ?!」
「いやいやいや、セカイの歌姫がハグなんかで許すと思うのが間違いですよねー巡音さんはねー」
「み、ミク姉様?!あ、あのそれ確かお誕生日にやった気が、というかテンプレ化している気が…!」
「細かいこと気にしない☆」
「気にしますぅう…!ん、んぅ…!」
往生際の悪いルカちゃんを黙らせるようにキスをする。
そういうメタいこと言うのは嫌われるんだぜ、なーんてね!
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