ニキ誕生日(ニキシン)

外でタバコを吸っていると誰かの視線を感じた。
何となく覚えがあって、はぁ、なんてため息を吐き出しつつケータイ灰皿にタバコを押し付ける。
「…そこのお前、こっち来い。見られてたら気になるだろ」
「…!…すみません」
ぶっきらぼうなそれに、ひょこ、と顔を出したのは駆堂シンヤ。
俺を共犯者に引きずり込んだ探偵の…、【とある事件】への依頼者だ。
弟を探してる、なんて言ってたっけか。
どこにでもいそうな大学生だが、家族想いで芯は強いらしい。
申し訳なさそうにしながらこちらにきた彼はそっと俺を見上げた。
「…何だ」
「いえ。…仁木さん、今日がお誕生日と聞いたので。その…おめでとう御座います」
ストレートな言葉に俺は目を見開く。
まさかこんな身も知らずの坊主に誕生日を祝われるなんてな…。
「…ったく、誰に聞いたんだよ」
「えっと…ヒノキさんから」
「…あのメガネ……」
言われた名前に俺は頭を抱えた。
人のプライバシーなんだと思ってんだ、探偵め。
「……すみません」
「謝ることはない。…まあ、どうもな」
「…はい」
とりあえず礼を言えば彼はホッとしたように微笑んだ。
そういえばここ最近こうやってマトモに祝われたことがなかった気がするな。

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