砂糖の日

6時間目が終わる頃、何か口寂しいなぁと思っていた。
そんな日に限っていつも持っているラムネがない。
いっそ購買にでも行ってやろうかと思ったが品揃えがあまり宜しくないのも知っていた。
我慢するしかないか、とぼんやり廊下を歩いていた…刹那である。
「…神代、先輩?」
「…おや、君は」
柔らかい声に振り向いてみれば青柳冬弥が首を傾げていた。
本をいくつか抱えていたから、図書室にでも行くつもりなのだろう。
「今日は委員会かな?」
「いえ。…自分の用事を済ませに行こうかと」
「なるほど。…良ければ、手伝わせてくれると嬉しいな」
ニコリと笑い、類は冬弥が抱える本を何冊か取った。
ありがとう御座います、と冬弥が笑む。
何の事はない会話を交わし、図書室に本を運んだ。
「…っと、ここで良いかい?」
「…はい、ありがとう御座います。…あの、これ」
本をカウンターに置いた類に、冬弥が何かを差し出してくる。
彼の綺麗な手に乗っているのは透明なフィルムに包まれた金色のキャンディ。
「ふふ、別に良いのに」
くすくす笑いながら、ありがとう、と言い…口を開く。
きょとりと目を丸くした冬弥は慌てたように包み紙を剝がしてキャンディを持ち上げた。
「…ひ」
キャンディをつまみ上げられたそれが類の口に近づいてきた途端、その手首を掴み指ごと口に含む。
ちろりと彼の指を舐め、キャンディを口に入れた。
「…っ!!」
「…ありがとう、冬弥くん」
微笑むと冬弥がくん、と服を引く。
仕方ないなぁ、と類はキャンディが入ったままの口を彼のそれに寄せたのだった。


さて、今日が何の日が知ってるかい?


調べてご覧、今日は


(     の日!)

name
email
url
comment