類冬ワンドロ・テスト/ご褒美

類は頭は悪い方ではない。
寧ろ良い方だ、と自負している。
だが、今日のテストはどうしようもなくやる気がなかった。
少しサボっても文句は言われないだろうか、なんて思いながら昼ごはんを共にした冬弥に愚痴る。
…そんなことをすれば止められると確実に分かっていたのに。
「テストは、きちんと受けたほうが良いと思います」
「そうは言うけれどねぇ」
冬弥の真面目なそれに、類は眉を下げた。
「…俺も、がんばりますから」
「おや?冬弥くんも、テストがあるのかな?」
小さいながらもはっきりとした激励に、類は首を傾げる。
定期考査の時期でもないのにテストが被るなんて珍しいな、と思った。
「体育で…体力テストなんです」
「ああ、なるほど」
冬弥のそれに、そういえばこの時期はそうだったな、と思い出す。
どうやら、彼は体育はあまり得意ではないらしかった。
「なら、テストが終わったら僕から君にご褒美を上げようじゃないか」
「ご褒美…ですか?」
類のそれに冬弥はこてりと首を傾げる。
そうとも!と芝居がかったように言えば冬弥は小さく微笑んでみせた。
「その代わり、僕にもご褒美をくれるかい?」
「…分かりました」
「話が早くて助かるねぇ」
こくん、と頷く冬弥に類は笑う。
「では、ご褒美を貰う基準を決めましょう」
「うん?」
「頑張った、は自分の感覚でしかありませんから。目に見えてわかる数字の方が良いかと」
「…なるほど」
真面目な冬弥らしい提案に類も考え込んだ。
確かに、明確な指標があった方が分かりやすい。
「なら、僕の方は80点以上、というのはどうかな」
「分かりました。では俺は平均記録を超える、で」
「了解。ふふ、君から何をもらえるか楽しみだねぇ」
機嫌の良い類に、今度は冬弥が何やら考え出した。
名前を呼ぼうとする類に冬弥は小さく笑む。
「…ご褒美にも、基準が必要ですよね」
「…え」
彼の声がしたかと思えば頬を何かが掠めた。
チャイムと共に冬弥が立ち上がる。
「…今のが基準ということで。それではまた、放課後に」
無駄のない動きで去っていく冬弥とは対象的に類は動けなくなってしまった。
暫くして出たのは深い深い溜め息で。
「…これは少し頑張らないといけないねぇ?」
呟く類の顔にはそれはそれはおっかない笑みが浮かんでいた。


何と言っても、可愛い恋人からのご褒美を逃すわけにはいかないからね!


(その後、クラスで唯一100点を出した類が提示したご褒美に関して色々あったのは…また別のお話)

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