類冬ワンドロ・遊園地/ライブハウス

「ライブハウス!!」
「フェニックスワンダーランド!!」
類と冬弥の言い争う声が飛ぶ。
この二人は普段から静かで仲が良く、特に冬弥は声を荒らげることなど滅多になかった。
だから、稀に見る光景であるといえばそう…なのだけれど。
「え、何あれ珍しい」
「あ、やっほー、杏!」
「やっほー、じゃないでしょ。なぁに、あれ」
何事かと教室をのぞき込んだ杏がきょとんとする。
それにひらひらと手を振るのは瑞希だ。
隣には寧々がいて黙々と本…台本だろうか…を読んでいる。
大変奇妙な絵図だった。
「なんかさぁ、週末二人で出かけるらしくて」
「…デート先、決まらないんだって」
軽く笑う瑞希に、寧々がぼそりと言う。
それだけで、なるほど、と分かってしまった。
…それもまあどうかと思うのだけれど。
どうせ、デート先を決める際、歌っている冬弥が見たいからライブハウスが良いだとか、ショーをしている類が見たいから遊園地デートをしてみたいだとか、そういうことだろう。
くだらない、と一蹴したいが必死に耐えた。
「俺はっ!ショーをしている神代先輩が一番好きなんです!だからフェニックスワンダーランドに行きたいんです!」
「僕だって歌っている青柳くんが一等好きなんだ!こればかりは僕も譲らないよ!」
「フェニックスワンダーランド!」
「ライブハウス!」
「…っていうかどっちも行けば良いじゃん」
ぎゃーぎゃーと言い争う二人に杏が言う。
途端にぴたりと止まった。
「どっちも、とは?」
「どういうことだい?」
「あー…。週末のライブなら出番一番遅い時間だし、前日リハ出来るからギリギリまでフェニランにいれるんじゃない?」
「…ああ…。そういえばこの週末は昼の一回公演だけだっけ。それに、うちもリハーサルは前日でしょ」
杏のそれに寧々もそう言う。
二人とも忘れていたのか、あ、という表情だ。
「はい、決定けってーい!じゃあボクらは解散しよ」
「いや、瑞希の場合は野次馬でしょ、もー…」
「…類、わたし、先玄関行ってるね」
瑞希の合図で寧々が席を立ち、杏が苦笑する。
教室を出て三人でへにゃりと笑った。
「なんか、ごめんねー?冬弥ってば頑固でさぁ」
「…ううん。類も、曲げないし」
「まー、あれじゃない?似た者同士ってことで」
瑞希のそれに杏と寧々も納得する。
部屋では次のデートプランが立てられているのだろう。
まったく、人騒がせな二人だと三人は気持ちを一つにしたのだった。



ライブハウスでも


遊園地でも


いちゃいちゃするのは変わらないのにね!



(それを言うのは野暮ってものだよ?)

name
email
url
comment