司冬ワンライ・中間バースデー/花言葉

今日は何でもない日。
ただそのはずだった。


「ほう、綺麗な花だな」
今育てている花なのだけれど、と写真を見せてくれた緑化委員の類に司はそう言う。
「ブルースターというのだけれどね。…君は知っておいても良いかと思って」
「…む?」
類の意味深な言葉に司は首を傾げた。
彼がこう言う言葉遣いをするのは今更なのだが…何かが気になる。
そもそも何故こんなことを言い出したのだろう。
「どういう意味だ?オレがスターだから!という訳ではあるまい?」
「勿論違うよ」
「んぐ…っ、じゃあどういう意味だ?」
あっさりと否定され、思わず言葉を詰まらせた。
別に期待した訳ではなかったけれど。
「司くんは誕生花って知っているかな」
「ん?ああ、誕生石や星座のように、誕生日毎に当てはめられた花のことだろう。流石に自分の誕生花は知らんが……」
「ふふ、流石司くんだね。実は、誕生花は星座と違って諸説によって充てがわれる月日が異なるんだ。このブルースターが当てはまる誕生日は1月とも3月とも、はては9月とも言われているよ」
類の得意げなそれに、司は「随分幅広いな」と苦笑する。
そうだねぇと類も肩を震わせた。
「だから、誕生花は誕生日毎にたくさんあるんだ。ブルースターもその一つ。…5月17日と5月25日の、ね」
「ほう、ブルースターはオレの誕生花…ん?」
類の言葉に司は頭を傾ける。
彼は今「5月17日と5月25日」と言った。
5月17日は司の誕生日だ。



「冬弥!!」
校舎から出ようとする冬弥を見つけ、司は声をかける。
良かった、間に合った、と走ってきたそのスピードを速めた。
きょとんとした冬弥が首を傾げる。
「司、先輩?あの、どうしたんですか?何か忘れ物でも」
「…いや、これを受け取ってほしい」
不思議そうな冬弥に、息を切らしつつ司は先程類から教えてもらった花屋で買った青い花束を差し出した。
「…え、これ…」
「この花はブルースター。オレと冬弥の誕生花だ」
「…!」
「中間バースデー祝いに、な」
ニッと笑いかけ、司はそう言う。
司の誕生日は終わり、冬弥の誕生日は先のこの日。
二人の誕生日の中間で。
「ブルースターの花言葉は、永遠の愛。…オレから冬弥に贈りたい。受け取って、くれるよな?」
司は優しく微笑んだ。
「…喜んで」
ふわり、と涙混じりで笑んだ冬弥のそれは、ブルースターの花より美しいと…本気でそう思った。
(まるで朝露に濡れた花のようだ、なんて)


何でもない日を、お前にとって、特別な日に変えよう

だって今日は二人の中間バースデー!



「司センパイー?ちょーっと良いッスかねー??」
「ま、待ってくれ彰人。あれは…!」
「公開プロポーズで冬弥泣かせといて何か言い訳ありますー?!!」
「いや、ない、無いが!!…ぎゃーっ!!」
「…あ、彰人…!司先輩は悪くなくてだな…!」
「…青柳くん、あれは流石に学内でプロポーズする司くんが悪いよ」

name
email
url
comment