ワンドロ・打ち上げ/ライブ後

お疲れー、という声が飛び交う。
いつもとは違い、今日はBADDOGSとしてライブステージに立っていたのもあってか珍しく気分が高揚した。
普段なら謙さんやセカイのカフェに行くが、今日はそんな気分ではない。
だからといってどこに行こうというわけではないのだが…。
近くの自販機で買った炭酸水と冬弥用の缶コーヒーを手に彼の元に戻る。
「…ほら」
「…。…ああ」
缶コーヒーを差し出すと冬弥はいつものように受け取った。
だが、普段ならばすぐにプルタブを上げる彼が缶コーヒーを両手で包む。
「?どうした?」
「…いや。…少し、セカイに行かないか」
首を傾げる彰人に冬弥が言った。
やはり冬弥はセカイで飲むコーヒーの方が良いのだろう。
了承し、スマホから音楽を流した。
目の前が真っ白になり、世界がセカイに変わる。
行こうぜ、と言う彰人に、冬弥が少し首を振った。
「冬弥?」
「…実は、KAITOさんから誰も来ない場所、というのを教えてもらったんだ」
「誰も来ない場所…?」
「ああ。みんなが来るカフェも良いんだが、今日は彰人と2人きりになりたくて…」
駄目だったか?と首を傾げる冬弥に、彰人は思わず口角を上げる。
やはり彼は最高の相棒だと。
「奇遇だな、オレもそう思ってた」
手を差し出し、彰人は笑う。



路地裏を抜けて、誰もいない映画館へ行こう


(今日の打ち上げは二人だけの秘密!)

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