類冬ワンドロ・麦茶/畳

今年の夏も暑い。

小さく息を吐きごろりと寝転べば、畳が目に入る。
新しくしたばかりだからだろうか、ふわりと井草の良い匂いが鼻孔をくすぐった。
「…類さん」
と、柔らかい声が降り注ぐ。
目を向ければ困った顔の冬弥が類を見ていた。
「おや、冬弥くん」
「そんなところで寝ていたら風邪を引きますよ?」
「こんなに暑いのにかい?」
傍に座りながら冬弥が言う。
類はそう笑い、起き上がった。
「暑くても肌を見せていれば風邪は引きます」
「ふふ、そうだね。気をつけるとしよう」
きっぱりと言う可愛い恋人に類はにこりと笑う。
代わりに、と冬弥が何かを差し出してきた。
「冷えた麦茶です。…どうぞ」
カラン、と中の氷が音を立てる。
受け取ったそれは飲まれずお盆の上に戻されたのだった…。




「…っていうシチュエーションのためには和室は必須だと思うんだ」
「…青柳くんとは、一緒に暮らす前提なんだね…」
「そもそも類も冬弥も互いにそんな呼び方はしていなかったと思うが」
熱く語る類と、ほんの少し呆れ顔の寧々、首を傾げる司。
ショー休憩の間に、和を取り入れたショーはどうかという話になり、いつの間にかそんな話になっていたのだ。
もしかしたら全員疲れていたのかもしれない。
「わんだほーい!!ねぇねぇ、皆で何の話してるの?」
「…あ、えむ」
「気にするな。類の妄想話だ」
「酷いなぁ、司くん。せめて幸せ人生プランって言っておくれよ」
「それを聞かされる身にもなってくれないか?なぁ寧々」
「そうだね、まあ同意。…えむ、アイス買いに行かない?司が奢ってくれるって」
「えー?!司くん、良いのー?!」
「待て待て!そんなこと言っていないぞ?!」
「ふふ。司くん、僕の話を聞いてくれるなら半分持ってあげても…」
「よーし、えむ、寧々!行くぞ!!」
司の声に女子二人はわぁっと声を上げた。
おや、と類は笑う。

出来れば全員に聞いてほしかったのに。
類と冬弥の、夏の幸せ人生プランを!

(他人にとってそれはただの惚気だったとしても!)

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