司冬ワンライ/夏休み・計画

『それでは、みなさん。しっかり計画を立て、良い夏休みに…』
教師の話を聞きながら司はふと窓の外を見る。
夏らしい入道雲が広がる景色に思わず表情を崩した。
今日は終業式。
所謂、明日から夏休み、である。


「…ん?」
帰ろうとし、司は少し前に見慣れた後ろ姿を発見し、目を留めた。
「おぅい、冬弥!」
「…。…司先輩」
ふわ、と振り向いた彼が柔らかく微笑む。
後輩であり恋人の冬弥は、カバンの他に何かを抱えていた。
「どうしたんだ?それ。随分な荷物だが」
「今から図書室で本の整理をするんです。夏休み前なので…そんなにかからないとは思いますが」
「そうか。冬弥はいつも真面目で偉いな!」
古い本を持ち上げる冬弥の頭を撫でる。
彼は、そんなことは、と謙遜するがやはり嬉しそうな表情を見せた。
少しくすぐったそうな冬弥が可愛らしい。
「手伝いたかったが…委員会の仕事を部外者が手伝うわけにもいかんからなぁ」
「その気持ちだけで十分です。…ありがとう御座います、司先輩」
微笑む冬弥は、では、と頭を下げようとした。
その表情がほんの少し寂しそうな気がして、司は、待て!と声をかける。
「…?どうかしましたか?」
「…冬弥は、夏休み中は何か予定はあるのか?」
「…え…」
司の言葉に冬弥はきょとんとしてみせた。
それから少し考えるように上を向く。
「…そう、ですね。ライブの予定が入っていたり、いつもの練習があったり…毎日、1日中、ということはないと思いますが」
「そうか!なら、どこかで遊びに行かないか?」
「…え?」
笑いかけた司に、冬弥は驚いたような顔をする。
何かおかしなことを言ったろうか。
「?どうした?やはり夏休み中は忙しいか」
「いえ!…あの、俺が先輩と遊びに行っても良いんでしょうか」
否定し、疑問を投げかけてくる冬弥に今度は司がキョトンとした。
「何を言う!良いに決まっているだろう?冬弥はオレの恋人なのだからな!」
「…司、先輩」
「…今まで遊びに行けなかった分、様々な所に行こうな、冬弥」
くしゃりと頭を撫でてやれば冬弥は、はい、と笑う。
「では、冬弥の委員会が終わるまでオレは教室で計画を立てておこう!終わったら来ると良い!」
「…良いんですか?今すぐでなくても…」
「なぁに、冬弥との楽しい夏休み計画を立てていれば時間なんてすぐだ!それに、夏休みは計画的に、というしな!」
ハッーハッハッハッ!と笑えば冬弥めた小さく笑んだ。
やはり、冬弥は笑っている方が良い。
「では、また後で」
「…ああ、また後で!」
頭を下げる冬弥に、司は手を上げた。
それから窓の外を見てにこりと笑う。

長い夏休みも、楽しいものになりそうだ。

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