ワンドロ・花火/見つめ合い

「ねーねー!花火やらないー?!」
きゃっほう!と楽しそうに店に入ってきたのはバーチャルシンガーであるリンで、途端に彰人は嫌そうな顔をした。
「…はぁ?なんで花火なんか…」
「えー!やろうよー?!キラキラして楽しいよ?!」
「だーから、高校生にもなってやらねぇっつー…」
「いいねぇ、楽しそう!」
ため息を吐く彰人に即答したのは杏である。
おい、と突っ込む彰人に、杏は、まあまあ、と笑った。
「だって、アンタ達は夏祭りに行ったし、こはねは臨海学校で海に行ってるんだもん。私も夏の思い出、的なことしたいし!」
「お前なぁ」
「私も、皆で花火したいなぁ!小さい頃にはやったけど…皆でやる花火はまた違うもんね!」
嫌そうな彰人に、こはねがにこにこと言う。
さっすがこはね!と杏が嬉しそうに抱き着いた。
「じゃあ早速準備しよ!リンちゃんも来るよね!」
「いいの?!行きたーい!」
「ふふ、じゃあ行こっか」
女子たちがきゃっきゃと楽しそうに計画し合うのを見て彰人は息を吐き出す。
こうなれば止められないのはとっくに知っていた。
…それに。
「…んで?お前は相変わらず花火とかやったことないのかよ」
「…そう、だな。耳にはあまり良くない、と花火大会には連れて行ってもらえなかったし、テレビもあまり見なかったからな。やっているのは知っていたが」
「打ち上げ花火はともかく…手持ち花火もか?」
「…手持ち、花火…」
きょとんとする冬弥に彰人は、あー分かった分かった、と手で制す。
花火に興味はないが…冬弥に綺麗なものを見せてやりたいなと、そう思った。


「…凄いな」
冬弥の目がキラキラ光る。
表情になかなか出ない分、彼の言葉はストレートなのだ。
パチパチと火花が弾ける。
「見てみて彰人、冬弥ー!二刀流!」
「おいバカ、レン!危ないぞ!」
楽しそうにレンがそれを持ってこちらに駆けてくるのを見、彰人は声を上げた。
冬弥が楽しそうに笑う。
「…彰人、火が終わっている」
「…ん?おお」
ちょん、と指摘され、彰人はそちらに目を向けた。
冬弥ばかり見ているせいで自分の花火を見ていなかったのである。
「…ほら、彰人」
古いのをバケツに投げ、新しく取り出すと冬弥が火を寄こした。
ん、と有難くそれを貰う。
シュウ、と音を立てた花火はオレンジ色の火花を散らした。
冬弥が持つ、青色のそれと混ざり合う。
思わず二人で見つめ合って…ふは、と笑った。
パチパチ弾けるオレンジと青の火花。
何となく…ぼんやりと、幸せだなと…そう、思った。
(花火より楽しそうな彼の方が美しい、なんて月並みな話!)



「見てー!!カイトすごいんだよ、ほら、六刀流!!」
「レン、待って待ってボクこれどうなってる?!」
「…あれは…良いのか…?」
「…ほっとけよ」

name
email
url
comment