ワンドロ・かわいい人/はんぶんこ

いつものセカイ。
いつものカフェで。
「レンー!ドーナツもらったからはんぶんこしようー!」
「え、待っ、オレ今コーヒーゼリー食べて…!あー器持ってくるから座って待ってて!」
レンとカイトのいつものわちゃわちゃに、カウンターにいた冬弥が首を傾げた。
「…はんぶんこ」
「どした、冬弥」
小さく呟かれるそれに彰人が聞くと冬弥は、ふるふると首を振る。
「いや。…そういえば、羨ましいと思ったこともあったな、と思っただけだ」
「はぁ??」
くすりと笑う冬弥に、彰人は心底分からない、といった声を出した。
はんぶんこが羨ましいなんてどうかしてる。
…まあ、姉である絵名には半分、どころか全部持っていかれるからだけれど。
「そういうやり取りができるのも仲の良い証拠だろう。…うちはそうではなかった、から」
ほんの少しだけ寂しそうにする冬弥に、彰人ははぁとため息を吐き出す。
ただただはんぶんこが羨ましいというかわいいそれではないのだろう…勿論、それもあるだろうが。
「…これ、は」
「ほら」
「?彰人?」
「半分、な」
先程注文したパンケーキを半分にした。
彼はどうも無理をする衒いがある。
しかもそれを隠そうとするのだ。
嘘が下手なくせに。
少し顔を顰め、ぽかんとする彼に「オレにも寄越せよ」と言ってやった。
「お前に何があったかは知らねーけど。冬弥が全てを背負い込む必要はないだろ」
「…彰人」
「お前の辛さも、お前の背負っている物も全部…このパンケーキみたいにさ、半分に出来たらって、そう思うけどな、オレは」
半分にしたパンケーキを差し出しながら彰人は言う。
冬弥は驚いたように目を見開き、それからふわりと破顔した。
「…そういうところ、だな」
「は?何がだ」
「いや、何も」
くすくす笑って、それを受け取る。
「つーか、オレでいいのかよ、はんぶんこの相手」
「俺の辛さも、俺の背負っているものも…もちろん、良いことも全て…分けるなら彰人が良いと…俺は思うが」
頬杖をつきながら聞くと冬弥が自分の注文したクッキーを割り、こちらに差し出してきた。
…まったく本当に彼だけは!
その腕をぐっと掴み、彰人は冬弥に笑いかけた。
「可愛いよな、お前はさ」
え、という表情の彼に触れるだけの口付けを施す。
かわいい人だな、と…ただ何となくそう思った。



良い事は二人分



悪い事は半分


二人で共有しよう



(悪い事は全て背負い込んでしまうお前を




全てオレのモノにしたい、その思いの名前は?)

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