司冬ワンライ・意地悪/我慢

「…司先輩は意地悪です」
「待ってくれ、冬弥!」
少し不貞腐れたかのような、それでいて泣きそうな冬弥を、司が止める。
「…俺は、我慢出来ると…そう…」
「…っ、だが、オレは冬弥に我慢してほしくはないんだ!!」
珍しく文句を言う冬弥の肩を司が掴んだ。
「初めての時も我慢しようとしていただろう!オレはあんな冬弥の顔は見たくない」
分かるだろう?と囁き、抱きしめる。
「なあ、冬弥。オレはお前が好きだ。だからお前の願いは叶えてやりたい。…だが、それとこれとは話が別だろう」
「…ですが、俺も先輩と同じものが見たいんです!そのためなら、俺の感情なんて…!」
「馬鹿を言うんじゃない!」
声を荒らげる冬弥を遮り、司が感情的な声を出した。
目を見開く冬弥に、司はすまない、と謝ってから優しく微笑んだ。
「何度も言うがオレはお前が好きなんだ。だからこそお前の感情を我慢してほしくない」
訥々と想いを聞かせる司に冬弥も困惑した顔を見せる。
どうしたら良いのか分からないのだろう。
そんな彼の手を司はそっと握った。
「…意地悪で言っている訳ではない。…分かってくれないか。オレの前では素直な冬弥でいてほしいんだ」
「…司先輩……」
「一緒に模索していこうではないか。なぁに、まだまだ時間はたっぷりある!」
「…はい」
司のそれに冬弥が笑みを浮かべる。
そんな彼を、司はぎゅっと抱きしめた。



「…なに、あれ」
「あれかい?高所が苦手な青柳くんが観覧車に乗りたいと言ったのをのらりくらりと躱していた司くんと揉めていた…けど、どうやら解決したらしいねぇ」
「わんだほーい!やっぱり仲良しが一番だよね!」

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