類冬ワンドロ・カーディガン/整理整頓

「…やあ、青柳くん。これで全部…おや」
乾燥機にかけ終わった温かい衣服を抱え、部屋に入ってきた類は目の前の光景に思わず金のそれを細める。
類の服を巣のように抱え、天使が…寝ていた。



事の起こりは数時間前だった。
少し肌寒くなってきたこの時期に類がまだ半袖だったのを冬弥が疑問に思ったようで聞いてくれたのである。
「…神代先輩は、寒くはないんですか?」
と。
類とて寒いときはあるが別に真冬に半袖を着ているわけでもなし、我慢できたから長袖を出していなかっただけなのだが、冬弥が衣替えを手伝うと申し出てくれたのでこの週末にやってしまうことになったのだ。
生憎、曇りだったのもあり、洗濯(乾燥も含む)担当が類、それを畳んでタンスに仕舞う担当が冬弥、と分けたのである。
「青柳くん、第一弾終わったよ」
「こちらも、引き出しが一つ空いたところです」
扉を開けてそう言えば冬弥もふわりと微笑んだ。
新婚さんみたいだな、と笑いながら次の洗濯物を受け取る。
そうして何回か繰り返していたのだが…眠くなってしまったのであろう。
冬弥は類のカーディガンを抱えたまますやすやと眠っていたのだ。
そういえばこのカーディガンは夏の衣替え期間の時に貸してやったものだというのを思い出す。
雨が降り、肌寒そうにしていた冬弥に「もし良ければ」と貸したのだ。
あの時はまさか恋人になれるとは思っていなかったが…人生は分からないな、と苦笑する。
幸せそうな冬弥の寝顔にそのままにしてやりたくなったが…何となく彼の腕の中にいるのが自分自身でないのが嫌だと思った。
「…抱きしめるなら僕にしておきなよ、可愛い眠り姫?」
囁き、そっと抱き上げる。
ゆわりと開いた冬弥の瞳が真ん丸に見開かれるまで後数秒。

…そして、再び洗濯機が稼働するまで…後、数時間、だ。

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