司冬ワンライ・お月見/お団子

今日はお月見だ。
妹の咲希がお月見しよー!と団子を張り切って作っていて、何だか微笑ましくなってしまった。
飾りながら…ふと恋人である冬弥の顔が浮かんだ。
作ってくれた咲希の了承を得て、司は電話をかけつつ家を出る。
走り出した先は、いつもの公園だった。
「冬弥!」
「…司先輩」
先に着いていた冬弥に、手を振り、駆け寄る。
「すまないな、わざわざ」
「いえ。俺も練習終わりだったので…どうしたんですか?」
「実は咲希がお月見だと団子を作っていてな。お裾分けに、と」
「…!ありがとうございます」
冬弥が嬉しそうに笑った。
小さい頃のようだな、と司も笑う。
「実はな、オレから咲希に頼んだんだ。…ほら、昔一緒にお月見をしただろう。それを思い出してしまってな」
「…そうだったんですか」
司の言い訳じみたそれに冬弥は肩を揺らした。
ふ、と彼が空を見上げる。
同じように見上げれば月が美しく輝いていて。
「月が綺麗ですね」
「そうだなぁ」
「…星はいつも綺麗で…俺は、羨ましく思います」
冬弥が微笑む。
その頬が僅かに紅く染まっていた。
それだけで、冬弥からの愛の告白だと分かってしまい、司は考える。
さて、どう返すべきだろうか。
死んでも良いわ、と返すには味気ない。
あなたと見る月だからでしょうね、も、あの月に手が届きそうです、も返すには何か違った。
そも、愛の告白は自分からしたいのだし。
それでも彼が伝えてくれた愛を返したいと、出来れば自分なりの言葉で返したいと…司は思う。
だから。
「月は、星と共にいてくれるものだとばかり思っていたが?」
「…?!」
「なんだ、違うのか?冬弥」
団子を口に放り込んでやりながら司は笑った。
「司、先輩」
「月が綺麗なのは当たり前だろう。何せ、隣で星が輝いているのだからな!」
「…そう、ですね」
冬弥が微笑もうとして…失敗したような顔をする。
その綺麗な頬に涙が伝った。
まさか泣かれるとは思っておらず、ぎょっとしたのは司の方である。
「どっ、どうした、冬弥?!!何か間違っ…?!」
「…違うんです。…きちんと伝わっていたのが、嬉しくて」
「そうか、良かった。…ちゃぁんと、冬弥からの愛は受け取っているぞ」
白い団子をつまみ上げた。
月と同じ、丸い月。
…愛と同じ、真ん丸の…月。
綺麗な冬弥の頬を手で包み、団子を放り込んでから口付ける。
そんなニ人を…月が、見ていた。

月がいるから、星は輝けるんだぞ!!
(月が綺麗ですね、は愛している
星が綺麗ですね、は貴方に憧れています)




「お兄ちゃん!いっちゃんから聞いたけど、とーやくん泣かせてたの?!」
「何?!一歌に見られ…?!いやちょっと待て、誤解だ、咲希…っ!!」

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