ワンドロ・球技大会/サッカーor野球

「…」
冬弥が悩んでいる。
珍しいな、と思いながら、あまり悲観的になっていないのは、音楽に影響が出ていないからだ。
父親と揉めた時ほど深刻な悩みではないのだろう。
…本人にとってはどうだか分からないが。
「…彰人」
「どうした?」
休憩中、小さな声で名を呼ぶ冬弥に、彰人は振り向いた。
ふぅ、と息を吐いた彼がおずおずと口を開く。
「…彰人は、球技大会…いや、やはり良い」
「…は?」
口に出してから止める冬弥に、彰人はムッとした。
途中でやめられれば気になるだろうに。
「んだよ、言えよ」
「…いや、聞くまでもなかったな、と」
「はぁあ?」
曖昧な笑みの冬弥に疑問符を浮かべる。
実は、と語り出したのは意外な話題だった。
「今度球技大会があるだろう?サッカーと野球、まだどちらに出場するか迷っているんだ」
「…ああ……。オレは確実にサッカーだからな」
「ああ。サッカーなら彰人のクラスと当たることもあるだろうが、野球は当たったとしても彰人はいないだろう?練習もセカイで彰人と出来る。だが、野球を選択した場合は競技時間がズレるから彰人のサッカーを観客という立場から応援出来るからな。どちらも苦手だが…彰人の事を考えると迷ってしまって…」
困ったように眉を下げる冬弥に、彰人は目を見開いてから息を吐く。
何故この相棒はこんなにも可愛いのだろう。
「…どっちでも良いんじゃねぇの」
「…彰人」
適当な返事に冬弥は更に困った顔になった。
そんな顔もかわいいな、と思いつつ彰人は笑う。
「野球も出来るから教えてやるよ」
「…え?」
「だから、好きな方にしろって。野球でもサッカーでも、オレが冬弥といる時間は変わんねぇんだからさ」




秋はスポーツの季節。


2人の距離は変わらず、近くに!!

(クラスが違うのに、常に2人が一緒にいるなんて、球技大会関係なく、いつものことじゃあないか!)

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