ワンドロ・テスト勉強/ご褒美

「あ、弟君!次の英語、抜き打ちテストあるよ!」
通りすがりの瑞希が教えてくれた有益な情報に、ありがとうという類の言葉が出る前に、「何故」が出てきてしまったのは不可抗力ではないはずだ。
何故抜き打ちテストなのに瑞希が知っているのか。
何故彰人に教えてくれたのか。
何故今…冬弥が隣にいる今言ってしまったのか。
「暁山たちのクラスは1週早いから、知っていたのだろう。彰人に教えたのは苦手だとこの間バレてしまったからな」
いつもの定位置である隣を歩いていた冬弥が、淡々と瑞希への疑問を返す。
どうやらバレていたらしい。
「…テスト勉強、頑張ろうな」
柔らかく微笑む割に勉強はスパルタな相棒に、はい、というしかなくて。
彰人は内心ため息を吐いた。
「…頑張るからには何かご褒美とかほしいんだけどな、オレは」
思わず小さな声で言ってしまった彰人に、冬弥がふむ、と考える。
なら、と冬弥が口を開いた。
「俺の時間と自由を1日彰人に与える、というのはどうだろう」
「…は?」
思ってもみない返答に彰人はぽかんとする。
本気で言っているのだろうか。
「オレが言うこと、何でもやってくれるのかよ」
「良い点数が取れたらな」
「…エロいことでも?」
「無論だ」
頷く冬弥に、彰人は悪い顔になる。
二言はなしだぜ、と英語の教科書を取り出した。

好きな人からのご褒美1つでやる気になる。


男ってそんなもんだろ!!


「…冬弥くん、いつも弟君と一緒にいる気もするんだけどなぁ」
「…。…青柳くん、あんまり否定もしないよね」
「瑞希、草薙さん、しーっ」

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