いい兄さんの日の彰冬とレンカイ

「やぁ、いらっしゃい」
カラン、とカフェの扉を開けると珍しくカイトが出迎えてくれた。
「こんにちは、カイトさん」
「珍しいッスね、1人なの」
「ううん、奥にレンがいるよ」
呼ぶかい?と聞かれ、返事をする前に大きな声が二人を迎える。
「あー!彰人と冬弥だ!いらっしゃい!」
「声がでけぇっつうの…」
「こんにちは、レン。今日も元気だな」
嫌な顔をする彰人と、くすくす笑う冬弥にカイトが目を細めた。
「二人とも、珈琲飲むかい?」
「今日はカイトが淹れてくれるんだよー!ブラックでも美味しく飲めるんだって!」
首を傾げるカイトと、嬉しそうなレンにへぇ、と彰人、お願いします、と冬弥が言う。
「彰人くんも、いいかい?」
「じゃ、お願いします」
答える彰人に、はぁい、とカイトが微笑んだ。
カップ持ってくるね!とレンが奥に引っ込む。
「はい、持ってきたよ!」
「ありがとう、レン」
カップを受け取り笑みを見せるカイトと、少しドヤ顔のレンを見ながら、冬弥が小さく笑った。
どうかしたのかと見れば彼が柔らかい笑みを見せる。
「こうして見ると、なんだか兄弟みたいだな」
「えー?オレとカイトが?そうかなー?」
「ああ。何だかたまに逆転する兄と弟、という感じがする」 
「あー…。カイトさん、普段は頼りねぇもんな」
「あれ?ボク褒められてないね?」 
きょとんとしたカイトに、そんなことは、と冬弥がフォローしてくれた。
そんな彼の袖をレンが引く。
何故だがレンはわくわくした表情で。
「普段はオレが兄ってこと??」
「ふふ。二人に会ったのはレンの方が先だからね」
「まあそれもそっか…。…って、頭撫でるなってば!」
もー!と怒るレンにカイトがごめんごめん、と軽く謝る。
冬弥が楽しそうに笑った。
「そういえば、彰人くんと冬弥くんは、お誕生日はどっちが早いんだっけ」
カイトが首を傾げるから、二人して顔を見合わせる。
それから。
「あー…冬弥ッスね」
「俺が五月、彰人が十一月です」
「じゃ、冬弥君のほうがお兄さんだね」
二人の答えを聞き、カイトが楽しそうに笑った。
その言葉にまた顔を見合わせる。
「…冬弥が兄さん、ねぇ…」
「あまりそんな気はしないな」
悩む彰人に冬弥が肩を揺らした。
「まあな。オレも冬弥も生粋の弟だし」
「面倒みが良い彰人はともかく、俺は弟気質かもしれないな」
「そ?冬弥もお兄ちゃんっぽいとこ、ちゃんとあるよ!冬弥は優しいし!!」
笑顔のレンに冬弥も、ありがとう、と微笑んでレンの頭に手を伸ばす。
くしゃ、と髪を撫でる冬弥に、「冬弥まで!」とレンが膨れた。
確かにそういう面を見れば兄っぽいような…気もするけれど。
つい、と彼の服を引いてみる。
首を傾げこちらを見る冬弥に、彰人は笑った。
「冬弥兄さん?」
「…!」
目を丸くし、冬弥がこちらにも手を伸ばして来る。
え、と思えば彰人の頭にそっと手を乗せてきた。
「どうした、彰人」
優しい声音の冬弥に、今度はこちらが目を丸くする番で。
「何だか、照れるな」
「なん…っ、お前なぁ……」
珍しく照れた表情をするから、彰人は、はぁ、と息を吐いた。
やはり冬弥とは対等な関係が一番だ。
相棒で、それから恋人で。

(別に彼に良い兄さん、は求めてないしな!!)




「…つーか、レンは弟で良いのかよ」
「可愛い弟が、時折見せるギャップで雄になるのもまあありかなーって」
「…そういうトコな、お前」

name
email
url
comment