サプライズプレゼント

「ねぇ、レン!召使のレンくん二人目来たよ!」
「良かったね、兄さん」
「裁判長の俺も二人いるんだよ。仲良しだよね」
「…それ、リンに言うなよ?明日のおはようガチャで仕立て屋のルカ姉ぇが仮天井だって嘆いてんのに」
嬉しそうな兄さんに、おれは呆れつつ言う。
ったく、嬉しそうなんだから。
ちょっと見た目が変わってるだけで、おれはおれなんだけどな。
きょとんとした兄さんは小さく首を傾げた。
「え、でも仮天井まで来なかったらルカに仕立て屋さんのコスしてもらうんだって息巻いてたよ?」
「はぁ?!ルカ姉ぇにんなことお願いしてんのかよ!」
「…え、そんな…??」
兄さんの言葉におれは思わず声を上げた。
目を丸くする兄さんに、謝る。
いや、でも、仕方ないだろ?
あのルカ姉ぇに仕立て屋さんのコスしてもらうなんて羨ましいじゃん?
うちのルカ姉ぇなんて優しいから仕立て屋さんみたいな表情見たことないし。
いいなぁ、爆速で裁判長の兄さん出しちゃったけどおれも我慢すればよかったなぁ…。
「そんなに羨ましい?」
「普段と違う格好してもらえるのは、正直」
「でも、俺もそこそこ色んな格好してるけど…」
「マスター、結局優しいもん。根本的に優しさが滲んでるんだよなぁ」
「そんなもんかなぁ」
「そんなもんなの」
くすくす笑う兄さんにおれは言う。
兄さんもマスターも優しいから、あの悪い感じはなかなか仕事でも見れないんだよなぁ。
「ふぅん」
楽しそうに笑った兄さんが立ち上がる。
風呂にでも行くんだろうとおれは気にも止めなかった。
兄さんの場合だと、リビングの片付けに行く場合もあるし。
実はクリスマス用の曲が終わったから、さっきまで遅めのクリスマスパーティーやってたんだよな。
おれたちの誕生日も近い割に今年は一緒くたにしなかったらしい。
ま、ただただ騒ぎたかったのもあるだろうけど。
「レン」
「ん?どーしたの、兄さ…」
呼びかけられて、風呂にしては早かったな、と見上げたおれは固まってしまった。
「…どうした?レン…いや、『召使クン』?」
にや、と笑う兄さんに、そんな顔も出来るんじゃん、なんて頭の隅で思う。
いや、なんで、もー…。
「…ガレリアン=マーロンのコスとかズルくね…?」
はぁあ、と息を吐いた。
兄さんが身を包んでいたのはおれのスマホ画面に映るそれと全く同じもので。
「ズルくないよ、レンが見たいって言うから」
「はぁ…?」
いつもの口調に戻った兄さんが笑う。
裁判長も幸せだった頃はこんな顔してたんかな、なんて思ったりして。
「…お誕生日おめでとう、レン」
不意に近づいてくる綺麗な顔。
ちゅ、と軽い音にキスされたのを知った。
…本当に!もう!兄さんは!!
「ありがと、兄さん」
微笑む兄さんを引き寄せて深いキスをする。
やっぱり兄さんは、悪い顔より『こっち』の方が好きだな、と思った。

おれの兄さんは、小悪魔だけど優しくて可愛い、最高の兄さん!!

(そんな兄さんをプレゼントに貰えるって、世界一嬉しいサプライズプレゼントだろ?!)



「ちなみにねぇ、他にも用意してたんだよ。団長さんとか、学校の俺の衣装とかアイドルとか、あとストリートとか」
「マジで?!後で着て?!」
「んー…。アニバーサリーのレンが来てくれたら、ね」

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