司冬ワンライ/降誕祭・初雪

街が浮かれている。
それは、街だけではなかった。
「…!司先輩!」
「おお、冬弥!」
白い息を吐き、冬弥が嬉しそうにこちらに手を振っているのを見、司も大きく手を振る。
今日は冬弥とのデートの日だ。
本来であればクリスマス・イブ、もしくはクリスマスにデートが出来れば良かったのだが…司も冬弥もイベントで忙しかったのである。
既にクリスマスツリーは撤去されていたが、何となくその余韻は残っていた。
「すまん、待たせたか?」
「いえ。俺も今来たところです」
ほわ、とした表情で笑う冬弥に司も軽く笑いかける。
柔らかなそれは司の心を暖かくさせた。
「では行こう。あまり寒空の下にいてはオレの大切な冬弥に風邪を引かせてしまうからなぁ」
「…先輩も、ですよ」
ふふ、と笑う冬弥の手を握る。
少し驚いたようだったが冬弥も握り返してくれた。
それだけで嬉しくなる。
「さて、まずはどこへ行く?」
「そうですね。本屋が多いので、たまにはあまり行ったことのない店、に…」
ふ、と冬弥の言葉が途切れた。
どうかしたのかと彼を見れば何か一点を見つめていて。
「…ホットワイン…?」
「え、あ、いえ!…どんなものなのだろうと気になってしまって…」
その店の看板を読めば、珍しくも冬弥が慌てたような声を出した。
別に遠慮することなんかないのに。
「ふむ、未成年用にノンアルコールのものもあるようだな。…すまない!未成年用のホットワインを二つ貰えるだろうか?」
店の主人に声をかけ、司はホットワインを注文する。
司自身もどんなものか気になったのだ。
「…ほら」
「…ありがとう、ございます」
ワインを渡すと冬弥が嬉しそうに微笑む。
そんなに飲んでみたかったのかと思えば、「それもありますが…マグカップが、司先輩と俺みたいで、良いな、と」と、柔らかく言われた。
「うん?」
へにゃりと微笑む冬弥に、自分の持つそれを見る。
表が白、裏が赤の陶器のそれには星と雪の結晶が散りばめられていた。
「なるほど、これは良いな」
小さく笑って司は一口ホットワインを飲む。
ノンアルコールなだけあって温かいぶどうジュースにしか思えなかったが、今まで飲んだ中で一番美味しかった。
「…うん、美味い」
「美味しい、ですね」
二人で同時に呟き、顔を見合わせ、ふは、と笑う。
…と。
「…む、これは…」
「…!雪…」
司の持っているマグカップに白いそれが落ちた。
空を見上げれば雪がチラついていて。
「初雪、ですね」
「そうだな」
白い息を吐き、目を細める冬弥に頷く。
雪が降った。
今年最初の雪が。

それは、どんな景色よりも美しく。


「…好きだぞ、冬弥」
「…?!せんぱ、」
「雪が運ぶ幸せに、星も負けるわけには行かないからな」
驚く冬弥に軽く口づけ、司は軽く笑った。


降誕祭の余韻浸る街で

永遠の愛を誓おう!!

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