司冬ワンライ・初夢/参拝

セカイにも神社ができたんだよ、と言ったのは誰だっけか。
とりあえず足を運んでみるか、と歩いていった所で思いもよらない人物を見かけた。
「…司先輩!」
「…は??」
ふわ、と笑うのは青柳冬弥。
おみくじの箱を携えて立つ冬弥は、巫女…男の場合は禰宜、というのだったか…を着ていた。
「冬弥?!一体ここで何を…」
「手伝いを頼まれましたので」
あんぐりと口を開け、そう尋ねてみれば、彼は楽しそうに笑う。
誰に頼まれたんだ、とか、何故彼が司のセカイに、だとか思うことは沢山あったが、それだけで、なるほどなぁと納得してしまった。
「その格好も似合うな、冬弥!」
「ありがとうございます。なかなか着ないものですので…少し、気恥ずかしさもありますね」
柔らかく目を細める冬弥に、司もにこにこと笑う。
何を着ても似合うのだから、照れることはないのに。
「司先輩、おみくじはいかがですか?」
「うむ、冬弥がそう言うならば一つ」
はい、と箱を差し出され、司は何の迷いもなく箱に手を突っ込んだ。
一つおみくじを取り、手を引き抜く。
「…これは…」
「…空白?」
紙を開き、二人でのぞき込んだ。
その中身は何も書いていない。
「…どういうことでしょうか」
「…そうだなぁ…」
首を傾げる冬弥の手を取った。
え、と目を丸くする冬弥に笑いかける。
「運命は自分で切り開くものだ、なぁ、冬弥!!」



高い電子音が鳴り響く。
お兄ちゃーん!と呼ぶ声が聞こえた。
「…夢、か…」
ぼんやりと呟き、起き上がる。
初夢なのだから、もう少し大胆なことでも魅せてくれたら良いのに、と思わなくはなかったが。
「…夢は現実に、運命は自分で切り開く、だな」
小さく笑い、スマホを開いて文章を打つ。
今行くぞ!と妹に言い、部屋を出た。

ベッドに置き去りにされたスマホに踊る文字。
返信のそれが来るまで…あと数分。


『おはよう、冬弥!初詣は終わってしまったかもしれないが、一緒に神社で参拝をしないか?』

『おはよう御座います。ぜひ、一緒に行かせてください。…先輩に、お会いしたいです』

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