ミクルカの日

「いぃなぁああ」
ミク姉ぇがスマホを見ながらため息を吐き出している。
そんなミク姉ぇをおれは…スルーした。
「ちょっと待ってちょっと待ってレンくん!」
「うわっ、なに、せっかくスルーしたのに」
「お姉様をスルーしないで?!」
ぐんっと手を引っ張られてよろけそうになるのを必死に堪える。
んなめんどくさいことになってるのに首突っ込むやつなんていないんですよ、初音さん。
「とりあえずこれ見て」
「はぁ…。何……プロセカのミク姉ぇとルカ姉ぇ?」
見せられたスマホの中には制服を着た…Leo/need、だっけ…のミク姉ぇとルカ姉ぇが手を振っていた。
あ、制服の兄さんもいる、可愛い。
「レンくん、ちゃんと見てる?」
「…見てるけど。アフターライブの映像だっけ?それがどうかした?」
ミク姉ぇにジトっと見られて慌てて言った。
何故だか息を吐き出したミク姉ぇがスマホを置く。
「レオニのミクもモモジャンのミクもビビバスのミクもワンダショのミクもニーゴのミクも、ルカちゃんとイチャイチャしててズルい!!!」
渾身の叫びにおれは呆れてしまった。
マジで何言って…。
「…いや、イチャイチャはしてないだろ」
「マジミラのミクもシンフォニーのミクもイチャイチャしてるしさぁ、なんかさぁ」
「なぁ、聞いて??」
ブツブツして言うミク姉ぇに、おれは一応突っ込んでみる。
聞くなら自分の世界に入んなっつーの。
「レオニはともかく、他はイチャイチャはしてないと思うけど」
「二人がセカイにいたらそれはイチャイチャしてるの」
「わぁ、暴論ありがとう」
「どういたしまして」
にこっとミク姉ぇが笑う。
良い意味じゃねぇんだけどな?
「ミク姉ぇもイチャイチャすりゃいいじゃん」
「そのルカちゃんがいないのー」
そう言えばあっさりと返ってきた。
あー…なー…。
「今日はミクルカの日なのに……」
「去年も言ってなかった?」
「言ってた。そしてその時は私が仕事だった」
「お気の毒さまでーす」
悔しそうなミク姉ぇに、軽くそう言う。
だって大分めんどくさいやつじゃん。
「とりあえずダブルラリアットかけて良い?」
「良いって言うと思った??」
ジリジリ距離を詰めてくるミク姉ぇから距離を取りながら逃げ道を探す。
大体、ダブルラリアットってルカ姉ぇの曲じゃんか!!
「ただい…何してるの?ミク、レン」
「あ、お兄ちゃん、お帰りー」
「助けて兄さん!ミク姉ぇが!!」
きょとんとした顔で兄さんがおれたちを見る。
それに、やっほーと手を振るミク姉ぇを振り切っておれは兄さんのもとに逃げた。
「ただいま帰りました。…あら?」
と、ルカ姉ぇの声がする。
振り仰ぐおれが見たルカ姉ぇは、今まで見たことない姿で。
「どうかしましたの?」
「何でもないよ。それより、綺麗だね、ルカ姉ぇ」
「ありがとうございます。プロジェクトセカイのルカの、☆4衣装からインスピレーションをうけたらしいです。服の形はアイドルのルカから、模様は教室のルカから、髪飾りは誰もいないセカイのルカから。ショーキャストとストリートのルカはなかったので、色とアクセサリーをモチーフにしたんだそうですわ」
ふわふわとルカ姉ぇが笑う。
揺れるレースの髪飾りと桃の髪。
「良いよね。俺は軍服着てきたよ。教室のカイトが着てたやつ」
「は?!言ってよ!おれ、郵便屋さんしたのに!!」
「…郵便屋さんなんですのね…?」
おれの言葉にルカ姉ぇが首を傾げた。
その、時。
「…ルカちゃん」
「はい。ミク姉様…きゃっ?!」
ミク姉ぇが突然抱きつく。
驚きながらもルカ姉ぇがそれを抱きとめた。
「ど、どうか…?」
「結婚しよ???」
オロオロするルカ姉ぇに、ミク姉ぇが突然プロポーズ、する。 
「け、結婚…?!」
「うん、良い家庭築くよ、約束する。だから、私の嫁に来て?一生私の隣で歌っててくれないかな?」
驚くルカ姉ぇに、真剣なミク姉ぇ。
ったく、よくやるよなぁ。
ミク姉ぇの通算3561回目のプロポーズ。
それにルカ姉ぇがふわりと微笑んで。
「…喜んで」

大体茶番でしかないよな。
毎回オッケー貰うんだから、さ!


一月三日、今年もいつも通りな、良い年になりそうだ。

(ミクルカの日のプロポーズは、毎年の恒例行事!)


「毎年毎年やってて飽きないのかね…兄さん?どしたの、楽しそうに笑って」
「ふふ、内緒」
(ルカもプロポーズされるように色々画策してるんだよ、なんてまだ知らなくて良いよね?)

name
email
url
comment