司冬ワンライ/ふわふわもこもこ・雪遊び

寒い。
毎週、いや、毎日言っている気がするが寒いものは寒いのだ。
特に寒いと言っていた次の日に寒さを更新している気がしてたまらない。
「…あ、天馬先輩おはよう御座いまーす!風紀委員でーす」
「…おお、白石か。寒いのに朝早くからご苦労なことだな!」
明るい声にそちらを向けば、寒さで鼻を赤くしながらバインダー片手にこちらに来る杏がいた。
本当ですよー!とブスくれながらも彼女は司を頭のてっぺんからつま先までじっくりと見る。
それから可愛らしく笑みを浮かべた。
「はいっ、オッケーです!…天馬先輩、ほーんと校則だけはきっちりしてますよねー」
「待て待て待て、校則だけとはなんだ、校則だけとは!」
「あはは!寧々ちゃんから聞きましたよ?良く爆破されてるーって」
「あれは爆破してくるやつがいるから結果としてそうなっているんだがな?」
けらけら笑いながら言う杏に司はほんの少しだけ嫌そうな顔をする。
安全ではあるし、スターになるためならば、と司自身が了承しているのもあるのだけれど。
「…まー、そんな天馬先輩だからこそ、うちの子を任せられるのはあるんですけどねー」
「む?何か言ったか?」
「いえ、別に。…あ、そうだ!」
小さな杏の声に司は首を傾げる。
へら、と笑った彼女が、何かを思いついたように声を上げた。
パチン、とウインクをした杏は少し向こうを指差して。
「うちの可愛い雪だるまがあっちにいると思うんで、そろそろ連れてってくれません?」



杏に言われた場所では見慣れたツートンカラーの髪をした可愛い恋人が、その髪に雪を乗せていた。
「…何をやっているんだ?冬弥」
「…!司先輩!おはよう御座います」
「ああ、おはよう」
髪に付いていた雪を払ってやりながら聞いてみれば彼はびっくりした顔をする。
それでも挨拶を忘れない辺り真面目だな、と思いつつ小さく笑った。
「…お、雪だるまか」
「はい。雪が降ったので…つい」
冬弥の足元には小さな雪だるまがある。
そういえば昔に雪だるまの作り方を教えたことがあったっけか。
「上手く作れるようになったなぁ、冬弥!」
「ありがとうございます。…先輩?」
「だが、このままでは冬弥が風邪を引いてしまうぞ?」
可愛らしく作られた雪だるまを褒め、彼の首に持っていたマフラーを巻いてやる。
ありがとうございます、と言った冬弥がもふ、とそれに顔を埋めた。
「…先輩の匂いがします」
「む、そうか、すまん」
「いえ。…安心、するんです」
嬉しそうな冬弥に、驚いて目を見開き、それから、ふは、と笑う。
まったく、なんて可愛らしいのだろう!
「わっ、司先輩?」
「そうかそうか、可愛いなぁ、冬弥は!」
くしゃり、と頭を撫でる。


雪がチラつく校庭で。


二人の周りだけが暖かかった。



「あ、天馬先輩、ありがとうござ…うわっ、冬弥ふわもこじゃん!!」
「…俺は、良いと言ったんだが…」
「何を言う!寒さは怖いんだぞ?!マフラーだけで乗り切れるわけがなかろう!」
「…あははっ、愛されてるねー!」

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