司冬ワンライ/ゲーム・お菓子

お菓子を作るゲームがあるんだよ!と言ったのは咲希だったかえむだったか。
もしかしたら両方だったかもしれない。
楽しそうだな、と言う司に、「じゃあアプリ入れてあげる!」と入れてくれたのだ。
最初は暇つぶしに、と思っていたのだが、なかなかどうして難しいのである。
本当のお菓子作りと引けを取らないくらいには様々なバランスが必要だ。
少しでも材料が多かったり少なかったりすればすぐに失敗してしまう。
「…司先輩?」
「ん、おお、冬弥か!」
疑問符を含んだ声が振ってきて見上げれば、可愛い恋人である冬弥がこちらを見ていた。
どうやら委員会が終わったらしい。
「お待たせしました。…ゲーム、ですか?」
「ああ。咲希たちが薦めてくれたんだがなかなか難しくてなぁ。…そういえば冬弥はゲームが得意だったか」
「クレーンゲームは得意ですが、こういったゲームは…」
少し眉を下げるが、そわそわしていた。
やってみたいのだろう。
とてもわかりやすくなったな、と笑顔になった。
「どうだ、時間があるならやってみないか?」
「…!良いんですか?」
「ああ。ここからレシピを選んでだな…」
隣に座った冬弥に画面を見せ、操作方法を説明する。
一度説明をしただけでコツを掴んだのか、完璧なお菓子を作り上げた。
「流石は冬弥だなぁ!完璧だ!」
「ありがとうございます」
頭を撫でてやれば少し嬉しそうにしている。
こういう顔はやはり年下なのだなぁと、そう思った。
「ゲームでは簡単ですが本当は難しいですよね…」
「なら、今度一緒に作ってみるか?」
「…え?」
「オレも、冬弥が作ったお菓子を食べてみたい」
目を細めると、冬弥は逆に目を見開く。
…そうして。
「…是非、一緒に作ってみたいです」
「ああ!では、冬弥が好きなクッキーでも作るか?」
「そうですね…。…せっかくなので、司先輩が好きなものを、作りたいです」
そう言って、冬弥が微笑んだ。
随分と可愛らしいことを言ってくれるなと、そう思った。
「大好きな先輩と一緒に作るものですので…司先輩の好きなものを作りたいんです。駄目でしょうか?」


ゲームと同じようにはいかないかもしれない。
それでも。

「駄目なわけがないだろう!愛しの冬弥がオレの好きなものを作ってくれるんだ、そんな幸せ、他にはないからな!」

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