司冬ワンライ・にゃんにゃんお/語呂合わせ

もう少しで猫の日だね、と最初に言ったのはえむだったか咲希だったか。
語呂合わせだと2人から教えられて、司は単純なものだなぁとそれだけを思った。
…そうだった、はずなのだけれど。
「…何故、こんな所に猫耳が…?」
楽屋に置いてあったそれに司は首を傾げた。
猫の日に因んで猫のショーがしたい!と張り切っていたえむだが、それにしては練習時間もないから、と諦めたのだ、それは覚えている。
じゃあ猫耳付けて子どもたちに風船を配るのはどうかと提案されてまあそれくらいなら、とは思ったが、わざわざ着ぐるみ達の仕事を取ることもあるまい、と猫の日は特別なことをするのはやめたのだ。
えむも咲希も残念がってはいたが、今やっているショーを中途半端にしてまでやることもなかろう。
役者が無理をせずその時できる最大級の力で、人々が笑顔になれるショーを作り上げることが目標なのだから。
そう、だから猫の日は何もしないことになった…はずなのだけれど。
「やあ、司くん」
「おわっ?!類!帰ったんじゃなかったのか?」
と、ひょこりと顔を出したのは類だった。
もう誰もいないと思っていたから思わず驚いてしまう。
「少し忘れ物をね。…それは?」
「見ての通り、猫耳だな。類の発明かと思ったのだが」
「流石の僕でも不用意に自分の発明品を置き忘れたりはしないよ。それに、見た所何の変哲もない猫耳のようだし…」
のぞき込んでいた類が小さく笑った。
あの類が言うなら猫耳は市販のものなのだろう。
「そういえば司くん。青柳くんと待ち合わせだと言っていたけれど、時間は良いのかい?」
「…しまった!!」
類の言葉に司はハッとした。
見れば時間が迫っている。
教えてくれた類に礼を言ってから駆け出した。
手に猫耳を掴んだまま。
「おおい、冬弥!」
「…司先輩」
ぼんやりと立っている冬弥に大声で呼びかける。
ふわ、と微笑んだ冬弥は、ふ、と首を傾げた。
「…。…先輩、それは?」
「え?ああ。…持ってきてしまったのか」
手にしたそれを指差した冬弥に説明をする前に少し好奇心が湧いて出る。
これを着けた冬弥は可愛いだろうな、と。
「…あの?」
「いや、語呂合わせで『猫の日』が近いらしくてな…」
「…ああ。…俺も暁山や白石から聞きました」
司の言い訳じみたそれに冬弥は小さく笑った。
そうして。
「…にゃん?」
手を招き猫の形にして、首を傾げる。
猫耳はついていないのに、頭上で揺れた…気がした。


にゃんにゃんにゃん。
本日、猫の日!

(可愛い冬弥が、より可愛くなってしまう日!)

「…あの、司先輩…?」
「…。…あまり可愛いことはしてはいけないぞ?男は狼なのだからな、分かったか、冬弥…!!」

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